全国教育問題協議会の要望に対する自民党団体総局の回答


一般社団法人・全国教育問題協議会は5月、8月、2月に役員会、5月に総会、8月に研究大会を開催しています。

 

【全国教育問題協議会が目指す活動の具体目標】

1.学校教育の正常化
(1)道徳教育の充実
(2)教科書採択・副読本使用の正常化
(3)ジェンダーフリー運動の阻止
(4)教職員団体及び教職員の違反行為の摘発
2.教育環境の正常化
(1)青少年健全育成基本法の制定
(2)有害情報を規制する法律の制定
(3)教育委員会制度の正常化
3.日本社会の正常化
(1)憲法改正運動の実践
(2)教育正常化を目指す政党・候補者の支援
(3)情報宣伝活動の充実

全国教育問題協議会の活動を理解する政党ならびに国会議員に対して、積極的に要望活動を行っています。

平成29年11月20日、全国教育問題協議会の堀口文良副理事長、同常務理事の山本豊氏は自民党団体総局文教部会主催の平成30年度の文教予算ならびに教育政策に関する要望説明会に出席し、全国教育問題協議会としての文教予算に関して6項目、文教政策7項目、計13項目いついて要望しました。

 

平成30年4月に自民党団体総局から各項目についての回答をいただきましたので、以下、その内容を紹介します。

 

《1. 文教予算に関する要望》

【全国教育問題協議会からの要望1】

わが国の公財政支出に占める教育費をせめて各国の平均水準まで引き上げていただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

わが国が持続的に成長・発展するためには、人ひとりの能力や可能性を最大限に引き出し、多様な個性を伸ばす教育が重要であり、教育投資の充実に必要不可欠である。

平成27年7月に取りまとめられた教育再生実行会議第八次提言においては、教育投資を「未来への先行投資」と位置づけ、その充実を図っていくことが必要とした上で、それに必要な財源確保のために、広く国民の間で、教育投資の効果や必要性について認識が共有されていることが不可欠とされている。

また、平成29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」においては、教育の無償化・負担軽減について①すべての3歳から5歳児の幼児教育の無償化②授業料減免や給付型奨学金の拡充による真に必要な子どもたちの高等教育の無償化③年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校の授業料実質無償化、などが盛り込まれた。

OECD(経済協力開発機構)諸国など諸外国いおける公財政支出など教育投資の状況を参考とし、教育投資をこれからの時代に必要な「未来への先行投資」と位置づけ、その抜本的拡充と財源確保に取り組んでいく。

【全国教育問題協議会からの要望2】

教育関係者の勤務条件の改善に取り組んでいただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

質の高い学校教育を持続発展させるためには、教師の勤務実態を踏まえ、教師の業務負担の軽減を図ることが喫緊の課題であると認識している。このため、平成30年度予算案においては、業務の効率化をはじめ、学校の指導・運営体制の効果的な強化・充実や教員以外の専門スタッフ・外部人材の活用などに必要な経費が盛り込まれている。今後とも、党教育再生実行本部の第九次提言などを踏まえ、教師の長時間勤務の是正にしっかり取り組んでいく。

【全国教育問題協議会からの要望3】

30人学級実現のチャンスであり、工夫していただきたい。平成29年度概算要求で定数改善については平成37年度までの10年間で約3万人の定数改善を目指すとしていますが、児童生徒の自然減による教員の定数減も同時に進行している現状ですので、私どもが念願している30人学級の実現に向けて、ご尽力をお願いいたします。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

教職員定数については、平成30年度予算案において、喫緊の課題である新学習指導要領における小学校外国語の授業時間数増に対応した質の高い英語教育を行う専科指導教員を確保するための1000人の加配定数の改善など、全体で1595人の定数改善に必要な経費を計上している。少人数学級については、きめ細かな指導が可能となることから有効な取り組みであると認識しているが、指導方法の工夫改善方策については、現場で様々な取り組みが行われており、各自治体の判断で、少人数学級やチーム・ティーチング、習熟度別少人数指導などを選択的に行うことが効果的であると考えている。少人数学級を含む今後の学級編成や教職員定数のあり方については、必要な検討を行っていく。

【全国教育問題協議会からの要望4】

義務教育費を現行の3分の1負担から全額国庫負担の制度改正にすることを切望します。都道府県の財政力格差が教育の質的格差にならないように義務教育は国が責任を負う制度にすべきでしょう。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

義務教育費国庫負担制度は、地方公共団体の財政力の差によって教育水準に格差を生じさせないため、国と都道府県の負担により教職員給与の全額を保障する極めて重要な制度である。

党教育再生実行本部の第二次提言においては「義務教育については国が責任を果たすとの理念に立ち、教育に地域間格差が生じないよう、義務教育費国家負担について、国が全額(100%)負担することを検討」と明記しており、引き続き、義務教育にかかる費用の国の負担割合のあり方について検討していく。

【全国教育問題協議会からの要望5】

いじめ、不登校の増加の教育現場の現実にいっそうの対応をしていただきたい。平成27年度のいじめ件数は、約20万件。不登校件数も15万件を超え、暴力行為も55000件と最高件数です。学校基本調査、とくにいじめの予防を目指し、「いじめ防止法」制定後もいじめに起因する自殺も後を絶ちません。とにかく学校に必要な、あらゆる種類の担い手を配置すると同時にこの問題に対する教師の更なる特別な研修を行うなど、具体策を期待します。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

不登校、いじめ、暴力行為などの様々な課題に対応するためには、学校に必要なあらゆる種類の担い手を配置することが必要と認識している。

教職員定数については、平成30年度予算案において中学校における生徒指導体制の強化に必要な教師の充実(+50人)などのため、全体で1595人の定数改善に必要な経費を計上している。

また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門性の高いスタッフの配置が必要であると考えており、平成31年度までに、スクールカウンセラーについては全中学校区(約1万人)に配置したいと考えている。そのため、平成30年度予算案においては、スクールカウンセラーで約46億円(前年度比0.1億円増)、スクールソーシャルワーカーで約15億円(前年度比2.3億円増)を計上している。

加えて、独立行政法人教職員支援機構によるいじめの問題に関する指導者養成研修や文部科学省幹部による行政説明も鋭意実施している。

【全国教育問題協議会からの要望6】

貧しい家庭に育っても、やる気があれば挑戦できる社会を目指していただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

だれもが家庭の経済事情に左右されることなく、希望する質の高い教育を受けられることは大変重要。

幼児期から高等教育段階までの切れ目のない教育費負担の軽減策として、平成30年度予算案においては◆幼児教育無償化に向けた取り組みの段階的推進◆要保護児童生徒援助費事業◆私立小中学校などに通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業◆高等学校修学支援金◆高校生など奨学給付金の充実◆給付型奨学金制度の着実な実施◆無利子奨学金の希望者全員に対する貸与の着実な実施◆国立大学・私立大学などの授業料減免などの充実、などに必要な経費を計上した。

とくに意欲と能力があるいも関わらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ない方の進学を後押しするために平成29年度に創設した給付型奨学金について、平成30年度から新たに2万人に支給する。

なお、平成29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に基づき、①すべての3歳から5歳児の幼児教育の無償化②授業料減免や給付型奨学金の拡充による真に必要な子どもたちの高等教育の無償化③年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校の授業料の実質無償化などについて、政府とも連携しながら、しっかりと取り組んでいく。

 

《2. 教育政策に関する要望》

【全国教育問題協議会からの要望1】

教員の中立を確保するための新教育三法を制定していただきたい。
①教育公務員特例法の改正(第18条第1項の「当面の間」を削除、第2項で罰則規定を新設し、刑事罰を新設する)
②義務教育諸学校における政治的中立の確保に関する臨時措置法の改正(臨時措置法でなく恒久法に改正し、教育委員会に調査義務を課すなど本来の効果を発揮させるための改正)
③地方公務員法の改正(教職員組合による政治献金の防止のため、収支報告の提出など公開を義務化)

【自民党団体総局文教部会からの回答】

選挙権年齢の18歳以上への引き下げに伴い、有権者を目の前にする学校現場において政治的行為が行われる可能性が高まることが想定される。主催者教育を受けるべき生徒などに対して、偏向した教育が行われることがあってはならず、教師の政治的中立性を確実に確保していくことがこれまで以上に必要となっており、党では「学校教育における政治的中立性を確保するプロジェクトチーム」などにおいて検討を進めてきた。要望の法改正の実現に向けては、真の主権者教育の実現に向けて、広く国民の意見を求めながら引き続き、検討を重ねていく必要があると考えている。

【全国教育問題協議会からの要望2】

平成30年に新学習指導要領が実施されます。実践にあたり、教育基本法を遵守するよう指示して下さい。とくに道徳教育の教科化の徹底を図っていただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

平成29年3月に公示された新しい小・中学校学習指導要領いついては、平成30音度から移行期間として、その一部が実施され、小学校は平成32年度、中学校は平成33年度から全面実施される。

新学習指導要領では、教育基本法や学校教育法が目指す普遍的な教育の根幹を踏まえた学校教育の実現を目指す観点から、新たに前文を設け、教育基本法第一条・第二条に定める教育の目的、目標を明記している。

そして、こうした教育の目的及び目標に基づき、個人一人ひとりの「人格の完成」と「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質」を備えた心身ともに健康な国民の育成が求められることを踏まえて、新学習指導要領においては、社会において自立的に生きるために必要な力である知・徳・体の調和が取れた「生きる力」の一層確実な育成を図ることとしている。

政府においても新学習指導要領の理念の実現に向けて、趣旨の周知など必要な施策に着実に取り組んでいると聞いており、新学習指導要領の実施に当たっては、各学校において教育基本法に定める教育の目的や目標を十分に踏まえた教育が行われるものと期待している。

また、道徳教育の充実を図ることも重要である。平成27年3月に学習指導要領などの一部改正が行われ小学校で平成30年度、中学校で平成31年度から「特別の教科 道徳」(道徳科)が全面実施される。道徳科の趣旨を踏まえた授業が全国で行われるよう、周知を徹底していくことが必要であると考えている。

【全国教育問題協議会からの要望3】

現在、音楽の教科書から文部省唱歌や童謡が少なくなっています。日本人の心を歌ったこれらを教材にした指導をしていただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

現行の小・中学校学習指導要領(平成20年告示)では、音楽の歌唱の指導において取り扱う文部省唱歌や日本古謡を共通教材として示している。また、これらの共通教材のほか、小学校では、長い間、親しまれてきた唱歌やわらべうた、民謡などを中学校では、民謡、長唄などを歌唱教材として取り上げることとされている。教科書では、学習指導要領に示す事項を不足なく取り上げることとされており、唱歌などが掲載されている。

これらの取り扱いは、平成29年3月に告示された新学習指導要領においても同様であり、今後とも、引き続き、日本のうたを教材とした指導の充実に努めていく。
※共通教材の例 「うみ」「春がきた」「茶つみ」「さくらさくら」「子もり歌」「ふるさと」「赤とんぼ」「荒城の月」など

【全国教育問題協議会からの要望4】

家庭教育支援法を制定していただきたい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

家庭教育は、すべての教育の出発点であり、子どもの基本的な生活習慣や社会的マナーの習得、自立心の育成、心身の調和の取れた発達などにおいて重要な役割を担うものである。

一方で、核家族化、共働き家庭、ひとり親家庭の増加、地域のつながりの希薄化など、家庭を取り巻く環境は変わりつつあり、身近な相談相手がいないなど、家庭教育を行う上での困難さが指摘されている。そのため、今後は、家庭教育に対する支援をより一層充実させていることが必要である。

このような現状を踏まえ、家庭教育支援に関する施策を総合的に推進するために、家庭教育支援法の制定に向けて取り組んでいく。

【全国教育問題協議会からの要望5】

教科書採択制度の刷新と一体化した新しい教科書法を制定していただきたい。教科書採択の不正が起こり、文部科学省が省令改正をしましたが、これだけでは独禁法が定める不公正取引の抑止力にならないと考えます。とにかく、教育基本法に基づく教科書を採択する制度を作りましょう。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

平成27年秋以降、複数の教科書発行者において、検定申請本の内容の外部への流出を伴う不適切な行為が行われていたことなどを受けて、文部科学省において、平成28年6月に省令が改正され、不公正な事案があったと認められる場合に、採択期間の途中であっても、教育委員会などの判断による採択替えを可能とする制度改正が行われた。

また、平成29年8月に教科用図書検定規則が改正され、検定・採択・発行に関して不公正な行為を行った発行者の検定申請について、内容審査に入ることなく不合格おつる制度改正が行われた。

このほか、一般社団法人・教科書協会において、教科書の宣伝行為に限らず、すべての活動を対象とした「教科書発行者行動規範」を策定し、業界としての信頼回復に向けて取り組んでいると承知している。

今後とも、このような動きを注視しつつ、新たな制度やルールの徹底を通じて、教科書の著作・編集、検定、採択、発行など、あらゆる段階における公正確保に万全を期していく。

【全国教育問題協議会からの要望6】

青少年健全育成基本法を制定して下さい。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

青少年健全育成基本法については、自由民主党の青少年健全育成推進調査会において検討が進められている。

【全国教育問題協議会からの要望7】

時代の変化に対応する憲法改正の実現を望みます。

【自民党団体総局文教部会からの回答】

憲法は国の未来、理想の姿を語るものである。新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、各党各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、国会の憲法審査会において議論を深めていきたい。

なお、平成18年度に党内での議論を経て改正した教育基本法においては、人格の完成を教育の根本的な目的の一つとしており、これからの教育が、わが国の未来を切り拓いていくため、①知・徳・体の調和が取れて、生涯にわたって自己実現を目指す自立した人間②公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する国民③わが国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人の育成、に必要な教育が規定されている。

また、平成30年度から道徳がすべての小学校で正式な教科となる。引き続き、豊かな情操と道徳心を育む教育の充実を政府に求めていく。