文教予算の充実が日本の未来を創る
岐阜県学校職員組合執行委員長 香田勝頼
日本の国づくり・人づくりに必要な事は、国が教育や学術研究に責任をもち、文教予算を十分に確保することである。具体的には、義務教育国庫負担金を元の全額負担に戻す事や、未来の新技術を生み出すために大学の基礎研究へ充分な助成をしていくこと等が挙げられる。
「国家百年の計は教育にある」とよく耳にする。しかし、現在の日本は百年先ではなく、現在の経済状況のみを見ているように思える。世界のどの国も教育政策は重要視されている。どれだけ経済状況が苦しい国でもまず教育に力を入れている。それは、人材育成が未来を見据えた国づくりに必要不可欠だととらえられているからである。つまり教育や学術振興は、未来への国家戦略として国が責任をもつべきものである。
しかし、残念ながら現在の日本の教育政策は国が責任を取っているとは言い切れない。それは、義務教育国庫負担金が三分の一に削減され、残り三分の二は地方自治体が負担している状況からも窺える。多くの地方自治体は財政難から教育予算は削減傾向にある。つまり子ども達は、同じ国に生まれながら、生まれた地域の財政状況によって教育環境が異なってくるのである。勿論、教育基本法に基づき学習指導要領に沿って学校教育を行っていることは間違いないが、教育設備や備品、教職員の数などの差は歴然としている。
また、義務教育の学校現場では、少人数学級を望む声が多い。それは、最前線で子ども達に向かう専門職である教員が、データでは現す事ができない教育効果を感じているからである。文部科学省も当然予算要望に盛り込んでいるが、成果主義の現在の日本では実現が難しい状況にある。
近年この成果主義によって大学の基礎研究分野では、国からの研究への助成金が削減されている。基礎研究は、確かに直ぐには成果としては現れにくい分野であるが、長い時間の地道な基礎研究の成果によって新技術になった例は枚挙にいとまがない。
そもそも日本の世界におけるアドバンテージは、言うまでもなく戦後の高度経済成長を支えた「ものづくり」に代表される高い技術力である。高品質な製品・技術を生み出すのは優秀な人材である。優秀な人材を生み出すのは充実した教育環境に他ならない。しかし、現在の緊縮財政下の日本の教育環境では、日本人の気質だからできる地道な基礎研究も、予算縮減によって続ける事が難しくなっている。当然のことながら優秀な人材は、よりよい研究環境を求めて海外に目を向けている。
今正に人材流出が起こっており、未来の新技術を他国に進呈している状況である。これでは、技術立国のアドバンテージが無くなってしまう。
このような状況を鑑み、経済が低迷している今だからこそ、国の教育予算を現在の成果主義で算出するのではなく、教育現場の声で分かるデータで見えない未来の成果を推し量るべきである。それが、日本の国づくり・人づくりにつながるものと考える。