教職員(公務員)の違法行為に罰則を


(社)全国教育問題協議会 常務理事山本 豊

 昨年末の12月26日、約3ヵ年政権を握っていた民主党が敗北し、自公連立政権が誕生、安倍晋三内閣がスタートした。

 しかし、景気対策、TPP、大震災対策、憲法改正、原発問題、外交、防衛、社会保障、公務員制度改革など、問題山積している日本の現状を安倍危機突破内閣がいかに打破するか、期待と不安が錯綜している。

 安倍自民党は今回の衆院選にあたり、まず復興、経済、安心、外交、教育を取り戻し、そして日本を取り戻すをスローガンに戦い、そして勝利した。特に自民党は他党に先がけて教育を経済、外交、暮らしと並んで四本柱として位置づけ、二十八項目にわたって具体的な教育に関する公約を発表している。

 改正教育基本法の理念に基づいた教育改革、教科書検定基準の抜本的改革、6・3・3・4制の大胆な教育制度の改革をはじめ、いじめ防止基本法の制定、教育委員会の見直し、青少年健全育成法の制定、幼児教育の充実、教師のインターンシップの導入など、多岐にわたる教育改革の具体策を公約として提示されているが、その中に、昨年十一月に全教協の要望項目が多く盛られており、大いに評価したい。

 違法なのに罰則がないのはおかしい
 全教協の最重点要望は「教職員の政治的中立の堅持と政治活動に対する罰則規程の設定」でした。公務員の政治活動は、国家公務員法一の二条、地方公務員法第三十六条によって禁止しており、三年以下の懲役、又は十万円以下の罰金が課せられている。ところが地方公務員法第三十六条は政治活動を禁止しながら罰則を設けず、また「教育公務員特例法第二十一条の四も「政治的行為に罰則を科してはならない」とある。つまり現行法規では「違法ではあるが罰則はない」のであり、これが教職員も含めた公務員による、やりたい放題の違法行為がまかり通った原因である。事実、戦後六十数年、日教組は全国規模のストライキを三十四回、ストライキ参加教員延数七百万人、懲戒処分を受けた教職員は約八十万人といったデータがあるのは公務員天国日本のみであろう。

違法行為が堂々と行われる訳。組合の幹部が県教委のトップに
そもそも地方公務員の「地位保障」の手厚さは民間人とは比べものにならない。公務員には「倒産」もなければ「リストラ」もない。地方教育委員会といった「守り神」に守られているのだからクビにはならない。現に山梨県教育委員会の義務教育課長のW氏は、平成七・八年度の山梨県教職員組合の本部執行委員であった。しかし今年、公立小中学校の教職員人事を担当する義務教育課長に就任し、事実上、山教組が人事を握ったことになった。管理職の登用への道も組合の役員が優遇されているのも事実だ。一昨年、政治資金規正法違反で罰金三十万の刑を受けた山教組の財政部長のO氏が教頭に昇格するといった事例もあり、民間では考えられないケースは山梨ばかりでなく、組合の強い地区では珍しくもない事件なのだ。

 このように違法な政治活動を基盤として成立したのが民主党政権であり、その民主党の幹事長は,“日教組のドン”のK氏だ。彼は「教育に政治的中立は有り得ない」と豪語するくらいだから、まさに民主党政権の実態は「日教組・自治労政権」だったとも言える。

 教育現場で癒着がおこる背景とは 
 このように教職員並びに教育委員会が癒着した事件は山梨のみでない。北海道教職員組合の国会議員への献金問題、北教組の指令によるいじめ事件の隠蔽事件、大分の管理職登用に関する汚職事件、滋賀県大津市で起きた教育現場と教育委員会の結託による中学生の自殺事件隠しなど枚挙のいとまが無い。何しろ教員組合と本来教員組合を監督すべき行政が暗黙のうち結託し、教育現場でどんな問題が起こっても両者で堅固な城を構築、その中でもみ消しする体質が現存している。

さらに強固な体勢を構築するのは臨時のカンパも含め、年額数十億といった運動資金が提供され、特定政党や政治家に対する違法な集票マシーンとなっている。本来「全体の奉仕者」であるべき公務員による,“きまり無き戦い”が恒常化してきたのである。

 このような教職員も含めての公務員の違法行為に対し与党であった自民党政府は一体何をしていたのか。結論は、日教組と本気で闘う自民党所属国会議員は少なく、文部科学省も与党の姿勢にあえて事を荒立てる姿勢を示さないで日教組と馴れ合いの関係を保とうとした。平成十八年に日教組と正面から挑んだのは、教育基本法改正を実現した安倍晋三氏と、日教組活動に対して大臣の立場にあっても堂々と批判した中山正彬氏のお二人だったが、マスコミの批難、政府の弱腰の姿勢により、無念にも両者とも退陣を余儀なくされたのであった。

今こそ教育正常化運動の実現を目指そう
 さて、時はめぐり、再度自民党政権が誕生し、安倍晋三総裁は「私は実現できない公約はしません」と国民に明言した。その教育に関する公約に私たち全教協が切望し、過去の自民党が実現しなかった「教員の政治的中立の徹底と教職員組合の適正化」を明示したのである。自民党はすでに下村博文氏を中心に教育再生実行本部を立ち上げ、教育の正常化に向け着々と取り組んでいるのは事実であり、従来と異なり、公約の実現に向け政府あげて具体化することに期待しているのは私一人ではない。

 しかし一抹の不安が横切る。昨年、橋下徹氏率いる「大阪維新の会」が公務員の政治活動を禁止する画期的な条例の制定に動いたのである。がしかし、日教組・自治労が支える民主党の反対運動によって条例に罰則を盛り込めなかった経緯があるからだ。

 しかし、日教組・自治労政権が敗退したいま安倍政権は従来の公務員対策を一新し「政治的行為に厳しい罰則を科し、法律を制定すべきである。その上で、今年度の参議院議員選挙に臨むように、早急に地方公務員法、教育公務員特例法改正に取り組まれんことを切望する。これが実現すれば、戦後の教育界の正常化を実現する第一歩となる。民主党は勿論、ほかの野党も参議院選は必死だ。自民党もまなじりを決して戦ってほしい。