全国教育問題協議会が自民党に要望書


10月25日、全教協理事会にて、自民党に提出した要望書を説明する中尾理事長

10月25日、自民党本部にて

一般社団法人・全国教育問題協議会は10月25日、東京の自民党本部で同党の政務調査会長、組織運動本部長、団体総局長の各長に教育問題に関する要望書を提出しました。

要望書の内容は以下の通りです。

教育問題に関する要望書

自由民主党政務調査会長、組織運動本部長、団体総局長様

平成28年10月21日 一般社団法人 全国教育問題協議会 理事長 中尾建三

私たち全教協は1977年(昭和52年)結成以来、約40年間、日本の教育正常化を願う全国の民間人が結集し、活動してきました。安倍内閣が教育こそ国づくりの原点として教育の再生をめざし、取り組んでおりますが、この機にあたり、本会として下記の通り、要望をまとめました。

1.文教予算に関する要望

(1)既に中教審答申、教育再生実行会議第八次提言などでわが国の公財政支出に占める教育費の割合が3.5%とOECD加盟国中、最低であり、少なくとも各国平均の水準とすべきであるとの指摘がなされていますが、改善の兆しはありません。国の将来にとって教育財政の拡充強化は財政健全化とは矛盾しないとの立場から平均値である4.5から5.0%の目標の達成にご尽力いただきたい。

(2)OECD国際指導環境調査(TALIS)=2013(中学校のみ参加)によれば、一学級当たり参加国平均24人に対し、日本31人、教員の一週間の仕事時間は参加国平均33.8時間に対し、日本53.9時間と長時間労働が際立っています。その理由の一因として、学校運営業務の時間が参加国平均のほぼ2倍となっていること、一般事務に携わる時間も同様に傾向にある。このことから、教員が本来の業務である授業に専念できる体制の整備が求められます。この計画が進行しており、注目しています。
なお、平成29年度概算要求で、定数改善については平成37年度までの10年間で約3万人の定数改善を目指すとしていますが、児童生徒の自然減による教職員の定数減も同時に進行している現状から、標準法の抜本的改善の好機でもあり、30人学級実現に踏み出していただきたい。

(3)標準法の運用上の措置として、「総額裁量制」が導入されて以降、各道府県段階で「非正規教員」の割合が増加傾向にあります。安倍内閣は「働き方改革」として、長時間労働と「非正規」を死語にすると宣言しています。今や、教育現場では、この二つが同時進行しています。特に私学においては「非正規」の増加率が顕著となっています。
学校基本調査によれば、「防止法」制定以降もいじめとそれに起因する自殺も後を絶ちません。平成27年度のいじめ件数は約20万件に達し、不登校も15万件を超えています。暴力行為も5万5千件と過去最高を記録しています。
こうした学校の実態を直視し、学校に必要なあらゆる職種の担い手を配置することをためらわず実現していただきたい。

(4)学ぼうとする意欲のある全ての青少年に学ぶ機会を提供することは、より良き民主国家を形成するための国家の責務です。経済的な理由で進行の道が閉ざされることのないよう教育を受ける権利の保障の観点からも重要な課題です。いま、一方で「子供の貧困」が社会問題化しています。親の貧困が子供に受け継がれ、階層化していく、健全な社会とは言えず、教育にとっても由々しきことです。
平成29年度文科省概算要求では、大学生らを対象とした「給付型奨学金」については、具体的な制度内容が固まっていないため、「事項要求」に止まっています。
この問題は国政選挙においても争点となった事項です。私たち全教協としては、幼児教育の無償化、義務教育の完全無償化(私学を含む)とともに、返済を不要とする奨学金制度の創設を要望します。

2、教育政策に関する要望

(1)義務教育費を現行の三分の一国庫負担から全額国庫負担に制度改正し、都道府県の財政力格差が教育の質的格差とならないよう、国が義務教育に関し最終的な責任を負う体制を整えていただきたい。

(2)文科省は、教科書会社による教科書採択に関する不公正な行為が幅広く行われていたことを受けて、省令改正を行いました。これによって、教育委員会の判断で不正が発覚した場合、小・中学校の教科書の採択替えを認める制度としました。これで果たして独禁法が定める不公正取引の抑止力となり得るでしょうか。教科書汚職は歴史的に存在しました。この際、弥縫的な些末な対象ではなく、無償措置法とも一体化した新たな教科書法を制定すべきではないでしょうか。ご検討をいただきたい。

(3)本年6月以降、選挙権年齢が18歳に引き下げられ、7月執行の参議院選挙で行使されました。民法改正論議は後追いとなり、権利行使が先行しました。このことの是非とは別に現行法制は、青少年、つまり成人に達しない者について従来保護の対象としてきました。
今後、法改正が行われれば18歳未満の青少年が対象となる「青少年健全育成基本法」の制定が求められます。18歳以上が有権者となれば、なお一層、18歳未満の青少年が健全に育つことが必要になります。
そのための条件整備が基本法制定です。積極的に取り組んでいただきたい。

(4)憲法改正に関しては、臨時国会段階から憲法審議会において熟議を重ね、成案を得る努力がなされることを立法府に期待します。

当会としては次世代のためにわが国の独立と平和が保たれる保障として、第9条の改正はもとより現憲法に欠落している家族の価値・伝統文化の継承など、国のアイデンティティにかかわる条項の新設がなされることを期待しております。そのためにも、人間形成の土台となる、倫理・道徳を育む人格教育を推進していく事が最重要と思われます。

DSC_0496

DSC_0499

DSC_0501

DSC_0502

DSC_0488