昨年から動き出す教育改革、道半ば 小林正・元参院議員


小林正先生6月4日、一般社団法人・全国教育問題協議会(中尾建三理事長) は、東京都内で役員総会を開き、全国教育問題協議会顧問で教育評論家の小林正・元参院議員が昨年来の教育改革の実態について分かりやすく講話して下さいました。

以下は、その内容です。

昨年は教育行政にとって大変大きな業績を上げることができた一年でした。

一つは大学教育について大学改革、ガバナンス改革を断行することで教授会の自治という大学の学長、総長の権限が失われていた異常事態だった大学自治が改められました。

10年前であれば、立て看板が大学内で至る所に立てられるところを、今回の改革が行われることで下村博文文科相も「感慨無量である」と語っておられました。

しかし、大学の正常化はこれからだ、ということが一つ目です。

それから、もう一つは長年、続いてきた地方行政法が抜本的に改められました。

これも極めて画期的なことで、平成27年4月1日から第一段階を迎えました。

具体的には今年は統一地方選挙が行われ、教育委員会や組長の人事問題があるので、おそらく今年7月から本格的な動きが始まるだろうと言われていますが、現在、教育委員の任期の問題で、その接続の関係から現在の実施状況は、まだ2割程度に過ぎない。まだまだ、ほとんど改まっていない現実があります。今後、新制度下で教育行政が地方レベルで展開されることをわれわれが各地域の中でしっかり見ていく必要があるのだと思っています。

5月14日、教育再生実行会議が第7次提言を発表しました。
内容は、これからの時代に求められる資質能力とそれを培う教育、教師のあり方が問われる提言でした。

全日教連この場には全日本教職員連盟 の方々も参席されていますが、第七次提言では具体的な教師論も展開されるのではないかと期待されています。専門職としての教師の地位の確立が何より求められているわけですので、その視点からも、われわれの立場からも進める必要があるのではないかと思っているところです。

昨年から全体会合方式から分科会方式に改められて、第一分科会でこの提言がなされました。提言はあと2つあります。

もう一つは財政問題。

最近、新聞でご案内の通り、2020年までに財政の均衡をどう図るかという大前提があり、財務省の提言として出てきたのが少子高齢化や学校統廃合に伴って児童生徒数が減少するのに合わせて、教職員の定員削減が2020年までに4万3千人カットするという内容です。これが財務省と文科省との間で折衝中でつばぜり合いが行われているところです。

教育の質を高め、一人ひとりの子どもたちに本当に手の届く教育を行うためには教師が必要です。そしてできるだけOECD(経済協力開発機構)が指摘する教職員の人数、行財政に占める教育費の割合が先進諸国の中で日本が極めて低い実態にあり、先進国で行財政に占める教育費の割合は平均5%ですが、日本は相変わらず3.5%前後。
先進国として恥ずかしい現状が続いています。

最下位にある実態の中で、さらに教員の数は減らされるという驚くべき状況に変わりつつある。

財政健全化は大いに結構だが、教育を犠牲にしてもいいのか、という観点から、われわれは訴えていく必要があるだろうと思います。

5月3日、「新しい憲法をつくる沖縄県民の集い」(主催・自主憲法制定沖縄県民会議)が、那覇市内で開かれまして「自主憲法と沖縄の未来」と題して講演しました。

前日の2日に役員の方々とキャンプシュワブの辺野古崎を現地視察して来ました。現地住民の8割近くが普天間から辺野古への誘致運動を行った人々であり、すでに漁業権も放棄しているので、条件が整っているのですが、過去三度の地元の選挙で反対派の市長が続き、オール沖縄と称する翁長沖縄県知事が昨年誕生して訪米していますが、絶対反対を主張しています。ところが現地はそんな雰囲気はまったくないわけです。

海上保安庁の大型巡視船が3隻、警備に当たっていて基地の周囲にはブルーテントで反対派が気鋭を浴びている状態。現場を見ると、反対派はプロ市民と呼ばれる活動家たち、退職公務員、政党関係者、とくに日教組と自治労の人たちが張り付いている状況です。

退職公務員の中には、時々、つばぜり合いがあって逮捕者も出るので、退職公務員は70歳以上にしろ、あまり影響が出ないからという非人道的な動きが展開されている実態を見て来ました。

「自主憲法制定と沖縄の未来」というテーマで話をしたのですが、沖縄の未来とは何か、といえば、次代を担う子どもたちについて、沖縄の教育に関するデータを全面に出しながら話しました。

沖縄には全国1位というものがいくつもあるのですが、不登校の生徒数が全国ワースト1位。なによりも驚くのは、正規の教員と非正規の教員の割合が4対1。正規の教員資格と勤務条件を与えられて教育に専念できるのは正規教員だけ。非正規は身分がきわめて不安定で、予備校の講師のように時間表のコマで教えるだけの立場の人たちもいます。給与も極めて低率です。

文部科学省が総額裁量制 という制度を導入して教職員の定数上、頭数さえそろえば、正規であろうが非正規であろうが各自治体の裁量に任せる制度となりましたので、正規を採用するより非正規を採用して頭数をそろえた方が自治体としては負担減となる。沖縄の場合、自主財源が25%しかないわけですから、それに対してどう頭数をそろえるか。結果として小中学校の全国学力調査結果は全国でワースト1位。小学校の段階で若干の改善があったと言われていますが、教育条件が整わなければ子どもたちの学力が上がらないというのは端的な事実です。

そういう点では教育再生実行会議の第三分科会で財政確立について強力に主張していく必要があると思います。これは文部科学省を後押しするという面もあり、4万3千人を削減するという財政均衡論だけの発想で行われている財務省からの圧力をはね返していかなければならない。今年度はそういう面で大きな課題を背負っていると思っています。

町村元文部大臣が先日、70歳で逝去されました。森首相、町村文部大臣というMMコンビの時、教育改革国民会議の最後の提案として初めて教育基本法の改正という言葉が入って、それを足場にして安倍内閣の時に実現しました。
教育改革に関して大変大きな功労のあった方でした。70歳というと、まだ、これからという年齢ですので、大変惜しまれる政治家でした。