「教科書法」の制定を目指そう


第二次安倍政権の成立以来、教育基本法の理念に基づいた教育再生が再スタートしました。

教育界は戦後体制を色濃く残している分野です。

占領行政の置き土産とも言うべき教育委員会制度、教職員団体の過度な政治関与があり、正常化を阻んでいます。

中でも、子どもたちと最も関わりの深い教科書が政争の具にされたり、歴史認識をめぐって近隣諸国の内政干渉を許す条項を検定制度に持ち込んだりと異常な事態がなお解消されていません。国内の反日的な言論がこれを誘導し、教科書採択現場まで、その勢力が及んでいます。

全国教育問題協議会・小林正顧問

全国教育問題協議会・小林正顧問

平成23年、中学校教科書の採択をめぐり、沖縄県八重山採択区内の竹富町が教育委員会の職務権限を盾に地区協議会として選定した育鵬社の公民教科書に異を唱え、文部科学省の指導を無視して無償措置対象外の東京書籍の教科書を民間の寄付で生徒に給付する異常な事態が続くこともありました。

文科省によると、地教行法の施行以来、全国的にこうした自体は一例もないとしています。

教育委員会のあり方が厳しく問われる今日、教科書採択をめぐって教育委員会が責任体制の確立と説明責任を果たし得る透明性の向上を図らなければ、制度の根幹に関わる議論に発展しかねません。

より良い教科書を次世代を担う子どもたちに手渡すために教科書法の制定が急務です。

以下は一般社団法人・全国教育問題協議会の小林正顧問による教科書法案(私案)です。

【教科書法案(私案)】
構成は第一章総則、第二章検定、第三章採択、第四章発行、附則1、無償措置法の改正、2.教科書の発行に関する臨時措置法の廃止、から成り立っている。

総則第一条は「この法律は、教科書について、教育基本法第二条及び第六条の趣旨を踏まえ、検定、採択、発行その他必要事項を定め、全国的な教育水準の維持向上を図るとともに、適正な検定と採択のもと、教育の目標達成に資することを目的とする」と定めている。

第二章検定については、第二十一条に「教科用図書の検定に関わる調査審議を行うため、文部科学大臣は国家行政組織法第八条に規定する機関として教科用図書検定調査審議会(学校教育法第三十四条第三項、文部科学省組織令第八十七条)を組織する。

2 検定の基準は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の理念に基づき、学校教育法第二十一条3項の定める教育の目標の達成に資することを旨として定めなければならない」としている。

第三章採択については第四十四条に「市(特別区を含む)町村の教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条六項に定める教育委員会の職務権限に基づき、教育委員会を単位として教科書採択を行う」としている。

これは八重山採択地区での問題を解消するため、附則の無償措置法改定と合わせて、改めて職務権限を確認したものである。閣議決定による措置が実行されない事態は今後も想定されるのではないかと思う。

 

教科書採択に関する深刻すぎる問題点と解決策 全国教育問題協議会が緊急提言

◆1.教科書贈収賄事件は業者と教員による犯罪◇

教科書会社が検定中の教科書を教員・校長・教育委員会に見せて意見を聞き、謝礼を渡していた衝撃的な事実が発覚しました。

三省堂や東京書籍、教育出版、光村図書など、戦後の教科書を作成して多くの採択数を子どもたちに届けていた会社十社が延べ3956人に謝礼として数千円から5万円の金品を渡していることが判明。

北海道では教科書採択に関わっていた教員116人が、同じく、神奈川県では教員16人が金品を受け取っていました。

検定中の教科書を外部に見せることは教科書検定規則で禁じられている行為であり、明らかな犯罪事件です。

文部科学省は、平成28年1月22日、教科書会社に自己点検の結果を報告させた結果、贈収賄事件が発覚しましたが、教科書発行各社で組織する教科書協会は、再発防止策として検定・採択に関する新たな業界のルール「教科書発行者行動規範」を文部科学省に提出しました。

◆2.「教科書発行者行動規範」はザル規範◇

この新ルールには、採択関係者に対して「検定や選定期間中の教科書に対する意見を聞き、謝礼を渡してはならない」と明記しました。

しかし、使用中の教科書について意見を求める場合は、謝礼の支払いを認めるとしているのはどう考えてもおかしい。

この業界で一番おかしいのは、これまで秘密裏に行われてきた「謝礼」すなわち違法な贈収賄行為を公然と行えることになります。検定・採択期間中であろうとなかろうと、その金額であろうと、公務員、とくに採択に関係するおそれのある教職員が金品を受け取ること自体が「収賄」であり、まさに法律を無視したルールではないでしょうか。

o0500075713547877662

この規範行為が、もし、適用されると、教科書採択はますます大きな会社が有利になります。大会社はこのルールに則り、より多くの教員と接触して金品をばらまくことも可能になり、公然と贈収賄が教科書採択で行われ、弱小教科書会社はつぶれていく結果となってしまいます。

また、検定期間中は、教科書の執筆者、編集者以外の者に申請本を閲覧させてはいけないことになっています。採択期間中に採択関係者に法定見本本を献本、貸与することを禁止し、違反した場合には、同協会のホームページに会員名と事実内容を掲載するそうです。

o0350045613547877661

ということは、今さらのようなことを定めるのは、どう見てもおかしいことになります。文部科学省から「白表紙本は外部に流出してはいけない」といった厳重注意の通達を無視したことになります。また、文部科学省自体が、従来の教科書会社の違法な販売実態をまったく知らなかったのか疑問です。

文部科学省は教科書協会対し、真に公正な教科書採択が行われるための行動規範を制定するよう厳しく指導すべきではないでしょうか。

◆3.教科書採択問題の根本的な解決策◇

(1)教科書問題の解決の前に日本では過去、教育基本法第16条の「不当な支配」の解釈、国と教育との関わりを定めていない日本国憲法の狭間で組合との対立の歴史があり、教科書採択問題も、これをクリアしなければ解決しません。

(2)使用中の教科書について意見を求めた場合の謝礼は贈収賄事件に発展する可能性が充分にあります。教育公務員として許されません。

(3)教科書制度の根底となっている検定制度にプラスして採択制度の改善を行うこと。その具体案として①教科書採択をめぐる都道府県教育委員会と市町村教育委員会の役割を明確にし、とくに市町村教育委員会は、採択基準を事前に作成し、教員を中心とする調査委員会に調査依頼を行う。都道府県教委は調査が容易にできる資料を提
供する。

(4)採択基準は、教育基本法・学習指導要領に基づき、その規定の協調すべき部分を検討する。例として「中学校社会科歴史的分野」では、教育基本法第2条5項の「伝統と文化を尊重し、国、郷土を愛する」と表記するなど。

 

■教科書をめぐる汚職、隗より始めよ

2015年夏から、教科書会社と教員の癒着問題について、全国教育問題協議会では、問題点をたびたび繰り返ししてきました。

大手の教科書出版社ほど、潤沢な資金を利用して営業をかけ、教師たちにPRできる力がある――。

これは教科書会社の間での暗黙の鉄則であり、新規参入する教科書会社が、なかなか、新規参入しても採用率が低い理由でもあります。

つまり、大手教科書会社の暗黙の利権が長年、国公立の小中高校で醸成され、その腐敗は、新入社員が勇気を持って指摘しても、逆にパワーハラスメントされ、封殺されるという、あまりにも理不尽な腐敗の根となって、教科書会社の経営者の中に深く深く浸透してしまっているのが実態ということです。

2015年秋、読売新聞が、この実態を勇気を持って報道し始め、ようやく、今回、実態の一部が発覚し始めているというのが、実は現状であり、氷山の一角に過ぎないというのが長年、この問題に携わってきた人たちの率直な感想でしょう。

教科書を出版する「三省堂」などが部外者への開示が禁止されている検定中の教科書を教員らに見せて謝礼を渡していた問題で、文部科学省は16年1月22日、小中学校用教科書を発行する各社に求めていた自己点検結果を発表しました。

既に報告済みの三省堂を含む全22社のうち、12社が検定中の教科書を教員ら延べ5147人に見せ、うち10社が延べ3996人に謝礼として数千円から5万円の金品を渡していました。

採択権限を持つ教育長や教育委員に歳暮や中元を贈っていたあきれた実態が次々と明らかになりました。

検定中の教科書を部外者に見せることは外部からの干渉を防止するため、教科書検定規則の実施細則で禁じられています。

それを堂々と、これまで破っていたわけです。

業界内で不適切行為が常態化していたことについて、馳浩文科相は同日の閣議後会見で「非常に残念。法律以前のモラルの問題だ」と批判。

1カ月以内に教科書会社への対応を決める意向を示しました。

同省によると、自己点検の対象は新学習指導要領に沿った内容の教科書検定が始まった平成21年度(中学校教科書は22年度)以降。

教員らへの金品提供が最も多かったのは業界最大手の東京書籍で2245人。次いで大手の教育出版が1094人でした。この2社で全体の8割を超えています。

つまり、この2社が業界を悪の道へ引っ張っていた諸悪の根源の会社ということになります。

謝礼は意見聴取時間の長さなどで幅があり、最も多かったのは三省堂と数研出版の5万円。このほか、数研出版は採択権限を持つ自治体の教育長7人と教育委員3人の計10人に歳暮や中元を贈っていました。

文科省は今後、検定中の教科書を外部に漏らした場合、その教科書の検定作業を停止する措置を検討するほか、同省ホームページで社名も公表する方針です。社名公表だけではなく、事の重大性がわかれば、文科省は検定作業の停止する処置が必要です。つまり、検定に通らなかない処分を実際に行う英断を行うべきです。これがされなければ、いつまでも文科省は教科書会社に小馬鹿にされるでしょう。

つまり、どの教科書会社も、多かれ少なかれ、これに抵触しており、検定自体が受けられない教科書会社の山また山ということになりますが、実際、そこまでは文科省はしないという目論見が教科書会社にはあるということです。

教科書会社は、今回の一件も、まだ、軽く見ています。

結局、自分たちの教科書が使われなければ、他の教科書は使い物にならない、と。

文科省は完全に馬鹿にされている。

文科省は、実際に金品を受け取った教員らの人数や採択への影響の有無なども調査し、結果がまとまり次第、公表するとしていますが、これだけで諸悪の根源を絶ちきることにはなりません。

癒着が判明した大手教科書会社は一定期間、教科書として採用できない措置を断固取るべきです。

教科書会社のあり方、そのものを根本から変えていく必要があるということです。

教科書市場は少子化に伴い、ピーク時の昭和33年に比べ約47%も減少。

そうした中、原則4年に1度の教科書採択でシェア(占有率)を落としたくない各社の営業は過熱傾向にあり、水面下で採択に影響力を持つ有力教員らに接近し、「意見聴取」の大義名分で囲い込みを図る流れは強まっています。

産経新聞の報道によると、実際、ある教科書会社幹部は「日ごろからアドバイスをもらっている先生方に検定中の教科書を見せるのはお礼の範囲であり、謝礼も当然」と漏らし、教員をつなぎ留めるためにはルール違反もやむを得ないとの考えを示唆しているとのこと。

別会社の幹部は「教科書内容はどこも大差はない。他社と差がつくのは営業力ぐらい」と言い切っているあきれた実態で反省の気持ちなど欠片もないのが実情。

「不適切行為はなかった」と文科省に報告した10社の対応を疑問視する向きすらあります。

過剰な営業活動を防ぐため、文科省は採択関係者の自宅訪問などを禁じる通知を出しており、業界団体の教科書協会(東京都)には、接待といった宣伝行為を禁じる内規があります。しかし、ある営業担当は「『自分たちで決めたルールも守れないのか』と言われれば反論できないが、営業をギリギリやらないといけない状況だ」と話しています。

一方で、教員側の規範意識の希薄さも懸念されます。地元の教育委員会に届け出をしないまま、謝礼を受け取ったケースは少なくなく、既に三省堂の問題では関与した教
員らが処分されています。

公教育、とくに教科書をめぐる汚職は徹底して断罪されなけば、再発防止はできません。

厳しい受験戦争を勝ち抜く受験生のカンニングや裏口入学を厳しくとがめるならば、まず、文科省は教科書会社の汚職体質を改めるため、まず、隗より始めよ。