戦後70年、道徳教育こそ節目にふさわしい


天皇陛下は1月2日の皇居での一般参賀では「本年が国民一人一人にとり、少しでもよい年となるよう願っています。年頭に当たり、わが国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」と語られました。

安倍晋三首相も3日、快晴の神奈川県茅ケ崎市で「今日の天気のような晴れ渡った一年にしたい」と語っています。

安倍首相は5日、伊勢神宮参拝後、三重県伊勢市で年頭の記者会見を行い、今年8月の終戦記念日に合わせて発表する戦後70年の首相談話について、「先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後アジア太平洋地域や世界にどのような貢献を果たすか、英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく」と述べています。

首相は「この70年間、日本は先の大戦の深い反省と共に自由で民主的な国家を作り上げ、アジアや世界の平和と発展にできる限りの貢献を行ってきた」と指摘。「積極的平和主義の下、世界の平和と安定に一層貢献する明確な意思を世界に発信したい」と意欲を示しました。

また、「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」とも述べ、アジア諸国に対する植民地支配と侵略への反省と謝罪を表明した1995年の村山富市首相談話(村山談話)の立場を継承する考えを改めて示しています。

中韓ロの圧力に押され、歴史認識問題にばかり焦点が移っている感が否めないわけですが、戦後70年の本丸は道徳教育の教科化による日本の真の意味での道徳復活です。

中央教育審議会は、昨年10月に「特別の教科 道徳」の設置を骨子とする「答申」を文部科学大臣に提出しました。これで道徳の「教科化」が実質的に決定し、「戦後70年」の悲願ともいえる「教科化」が制度的に達成された意義は大きい。

しかし、今回の「教科化」によって、道徳教育の「形骸化」が解消されたかといえば、問題はそれほど単純ではなく、「答申」からは、「特別の教科 道徳」を設置することで「何が変わるのか」「どう良くなるのか」という強いメッセージ性が伝わって来ません。

「答申」は検定教科書の導入を提言し、授業の指導法にも積極的な提言を盛り込んだことは大きな成果ですが、その一方で、道徳の「専門免許」は見送られ、大学での教員養成改革への実質的な提言はありません。これで本当に「形骸化」が克服できるのか疑問です。

各大学の現状では道徳教育の研究者は極めて少数で、道徳教育の専門でない教員が大学の講義を担当することは珍しくないのが実情です。教員免許を取得するために必要な道徳の単位数は2単位程度で、専門外の教員が講義を担当する実態は、教員養成の空洞化とも言えます。

そこで重要なのは、大学で道徳の「専門免許」が必要であること。

教員養成が免許と連動している以上、「専門免許」を制度的に担保しなければ、大学で道徳教育を研究する基盤が形成されないからです。

いじめや自殺の深刻化、インターネットの氾濫など、子供たちが直面している現実はますます複雑です。こうした中で、子供の心に響く適切な授業を展開するためには、教師の側に高度な「専門性」が求められ、とくに道徳の専門免許は必要不可欠です。

特に中学校段階での「専門免許」は、世界的にみても標準化されていて日本に導入しない理由はありません。

道徳の「教科化」は、平成30年度から完全実施される予定ですので、早期に道徳の専門免許取得制度を構築していくことを望みます。

安倍晋三首相が5日に行った記者会見での発言の要旨は次の通り。

◆先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩みなどを、英知を結集して新たな談話に書き込む。歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継ぐ

◆あらゆる改革を前進させ、改革断行国会にする

◆年末にまとめた経済対策を早期に実行に移し、経済最優先で取り組む

【冒頭】
日本経済を再生するためには、これまでにはない大胆な改革を進めていかなければならない。東日本大震災からの復興、教育の再生、社会保障の改革、外交・安全保障の立て直し、地方創生や女性が輝く社会の実現にも真正面から取り組んでいく。いずれも戦後以来の大改革だ。今月始まる通常国会は「改革断行国会」としていきたい。

【戦後70年】
村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継いでいく。戦後70年の節目を迎え、安倍政権として、先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後アジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくのか、世界に発信できるようなものを考え、新たな談話に書き込んでいく。国際情勢が大きく激変する中で、国民の命と暮らしを守り抜くための新たな安全保障法制を整備する。

【経済対策】
アベノミクスはいまだ成長途上だ。昨年の総選挙では、地方や中小・小規模事業の皆さんの声を直接うかがった。年末に取りまとめた経済対策を早期に実行に移し、こうした多様な声にきめ細かく対応する。

【地方創生】
昨年末、50年後に1億人程度の人口を維持する長期ビジョンと今後5年の目標を盛り込んだ総合戦略をまとめた。ふるさと名物の開発、販路開拓を推進するため、次期通常国会に法案を提出する。全国画一的でないアイデアとやる気のある地方が、規制の束縛から自由に地方創生を実現するために、国家戦略特区に地方創生特区を指定する。全国のモデルとなる改革拠点として、今春を目途に数カ所指定したい。