「日教組」と政治のひどい癒着


 教職に就く人間には政治的な中立性が求められる。子供を教え導く立場の者が特定の党派に肩入れするのは倫理上好ましくない。そもそも公立学校の教員が政治に関わることは、教育公務員特例法などで禁じられているのである。

 ところが、昨年の総選挙に当選した民主党の小林千代美衆院議員の陣営に1600万円の「裏金」を提供したのは、まさに教員の集まりである北海道教職員組合(北教組)だというのだから、呆れるほかない。

 結局、この1600万円を巡っては3月1日、4人が政治資金規正法違反で逮捕されたが、うち3人は小関顕太郎書記長、長田秀樹委員長代理ら北教組幹部だった。まさに、子供を教え導く教師が「裏金」を選挙資金として提供した容疑で逮捕されたのである。北教組は人を提供し、公選法に抵触しながら小林千代美の選挙を支えたわけで、そのうえ裏金まで渡していたのである。

 「選挙になると、学校を休みがちになる教師が多い」と嘆くのは、札幌市立のある小学校校長である。「彼らには安定的な学級運営が困難なので、学級担任にしにくい。すると北教組の専従になる例が多いようです。教育者として子供たちと真摯に向き合うという使命感に乏しく、関心はもっぱら政治的な方向です」

 「小林議員のことが表に出ても、まるで驚きませんでした」と言うのは道内のある公立中学の校長で、こんな例を目にしてきたという。「組合員は選挙のたびに戸別訪問し、候補者のビラを配り、名簿を集め、それを見て後援会が電話をかける。昨年の衆院選でも戸別訪問していました。顔が知られていない地域を、”後援会の者です” と言って訪ね、しかも2人1組で監視し合う。恐怖支配です。数年前に勤めた北教組が強い中学では、勤務時間に組合の朝会を行い、校長や教頭もいる場で組合の分会長が “今日は2学年の先生が2人1組でこの地域を回ってください”などと選挙の連絡をしていた。驚きでしたね」「法令上は学校の人事権は校長にありますが、道内の多くの学校では組合主導で人事委員会が作られ、委員長に北教組の分会長などが就いて人事案をまとめ、校長に提出する。校長がそれを断れないのをいいことに、北教組は組合を辞めた人を差別するんです。人事権を握り、個人の弱みに付け込んで学校を支配しているんです」こうして教師たちは、見えざる鎖につながれた奴隷のごとく、”選挙マシン”として稼動するわけだ。

 ◆広島県教職員組合の例
 もっとも、政治活動に邁進しているのは北教組の教師にかぎらない。広島県教職員組合の例について、同県の公立中学の教諭が打ち明ける。「組合員を動員してはがきを書かせ、2人1組で戸別訪問させ、事務所で電話をかけさせる。ただし特定候補への投票を促すと違法なので、”私は○○さんが好きです”という文句を使うんです」「組合員が校長になったら”今後も組合の言うことを聞きます”という確認書に署名させられる。非組合員の校長で、ましてや組合に意見でもしたら、組合の責任者が校長に反省文を書かせます。09年と03年に自殺に追い込まれた校長も、それぞれ反省文を書かされていました」

◆山梨県教職員組合の例 
 日教組と政治の癒着について語るなら、山梨県教職員組合(山教組)を忘れてはなるまい。04年の参院選に向け、輿石東氏のために集金活動に邁進し、05年に政治資金規正法違反で告発されたのが記憶に新しい。正確に言えば、告発されたのは山梨県民主教育政治連盟だが、「事実上、カンパを集めたのは山教組です」と言うのは、自身も組合員である山梨県の公立小学校の現職教諭。

 集めた金が県政連の政治資金報告書に記載がなく、政治資金規正法違反に問われた。06年1月に県政連会長と山教組財政部長が略式起訴され、追って山教組の幹部24名も処分されたのだった。むろん、山教組は”集金マシン”にとどまらず”集票マシン”でもある。

 教諭の話をさらに続ける。「07年の参院選も民主党の米長晴信議員の票を”1人20票集めろ”との指示。みんな親戚や友達、教え子や保護者にまでお願いし、作った名簿をもとに教員が各地の教育会館に詰めて電話をかけ、グラフを作って学校ごとに競わせていました。各校の分会長は、ノルマに達しないと山教組書記長から尻を叩かれるのです」それを行うのが子供を預かる教師とは恐ろしい。

 「逆らえば出世できなくなるので、みな黙って山教組に従うのです」と、先の校長先生。山教組に忠実なら出世する--その顕著な例を紹介しよう。
 例の政治資金規正法違反で略式起訴された山教組の元財務部長、長田英和が昨年4月、市立小学校の教頭に就任。処分された例の教員も小学校教頭になっていたのである。
(週刊新潮、2010/3/11より要約)