民主党政権3年で「日教組」教育破壊の大罪の数々


 自虐史観に基づく反日教育に邁進し、日本の教育を根幹から揺るがしたゆとり教育も、早い時期から提唱してきた日教組。今の政権がそんな組織に支えられているとは、もはや悪い冗談とでも言うほかないが、ともかく、3年余り前の政権交代で日教組は,与党化”し、教室でイデオロギー教育が公然と行われるようになるのではないか、と懸念されたのである。

 実際、今年1月に富山県で行われた日教組の教研集会では、長崎県の中学校で、日中戦争における南京戦で日本の軍人が百人断りを行った、という話を“事実”として教えた例や、宮城県内の高校で、反原発の主張を生徒たちに押し付けた事例などが、モデルケースとして堂々と報告されている。

 もっとも、こうした授業は今、必ずしも多数派ではなく、“与党化”してからの日教組の運動は、恐ろしいことにいつそう巧妙化しているという。それについては追って詳述するが、その前に、日教組の政治的立場について概観しておく必要があろう。

 民主党内における日教組の代弁者は、言うまでもなく輿石東参議院議員〈76)である。今なお民主党幹事長を務める、この“日教組のドン”は、山梨県内の小学校教諭から山梨県教組〈山教組)の幹部になったという経歴を持つが、そのお膝元である山梨の状況を、まずは覗いてみたい。

 興石氏は2009年1月、日教組の「新春の集い」で、「教育の政治的中立など、そんなものはありえない」と発言したが、県内に住む30代の女性の話に耳を傾ければ、輿石氏の発言の趣旨がよくわかる。

「20年ほど前のことですが、山教組が支援する候補者の後援会入会カードのようなものを、私が通っていた小学校では、担任教師が堂々と配っていました」

 個票と呼ばれるこのカードを、担任は5~10部ほど児童の連絡帳に挟み、児童が保護者に渡していたというが、それにしては部数が多い。要するに、親は親戚や知人に頼み込んで名前や住所、連絡先を記入してもらい、児童は空欄が埋められた個票をランドセルに入れて登校し、担任に提出していたというのだ。

「ノルマが達成できない親には、教師が電話をかけて催促。子供への評価に影響があると脅迫する教師もいました。まさに子供を人質にして、保護者に投票と集票を命じるのです」(同)彼女の母親は、教師の政治活動に制限が課せられているのを知っていた。だが、それを指摘されると教師は怒り狂ったそうだ。

 ちなみに、女性が小学生だった1984年、輿石氏は山教組委員長に就任。90年の総選挙に旧社会党から出馬し、山教組のお膳立てで当選するまで、この職を務めていた。また、これは決して過去の話ではない。

 山教組の加入率は今も9割を超え、その集票マシーンぶりは「3日選挙」の異名がある。支持する候補者が当初劣勢でも、短期間で逆転させてしまうからである。高い組織率を背景に山教組は小中学校の人事権を掌握し、個票を集められない教師の左遷など朝飯前だから、教師たちは血相を変えて集票に邁進するのだ。

 むろん、そんな状況に対して有権者の憤りは強く、「職員室に各教師の個票獲得数が掲示されていた。まるで営業部か選対本部だ」「選挙終盤になると教師は生徒に自習を命じ、職員室で追い込みの電話をかけ続けていた」「教師の二世率が異常に高く、教師の子供を優先して採用しているとしか思えない。結果、親も子も山教組に感謝するようになる」

 取材で聞くのは、そんな声ばかりである。だが、有権者を憤らせるばかりでは、日教組の理想の実現はままならない。そこで、政権交代後は,“現実路線”を歩んでいると、山梨県の教育関係者は指摘する。

「実は山梨は、保守的な風土です。たとえば、小中学校の卒業式で日の丸や君が代を否定すると、保護者が騒ぐので、以前からイデオロギー教育が堂々と行われていたわけではないのですが、政権交代後は、竹島問題なら教えることをサボったり、韓国側の主張だけを強調したりするばかりの授業になっています」

 問題が露呈しにくいように、巧妙にカモフラージュされているというのだ。

◆出世するには選挙違反を

 今や“与党化”した日教組は、授業でことさらイデオロギーを押し付ける必要はない――。その“現実路線”はむろん、文科省との関係においても同様である。神奈川県教組の元委員長で、社会党の参議院議員も務めた小林正氏が言う。

「自民党時代は、日教組は文科省に要求書を出して交渉するしかありませんでしたが、民主党が与党になった後は、日教組の組織内議員が内閣の一員として、文科省に堂々と入って政策を指揮しています」

 たとえば、今年10月まで文部科学大臣政務官を務めたのは、福岡県教組の幹部から日教組中央執行委員を経て、01年に初当選した民主党の神本美恵子参議院議員〈64〉だが、彼女の後援会事務所はなんと日教組本部のビルに入っており、国会で質問した自民党の義家弘介参院議員も呆れて言う。

「極端な比喩を使えば、警察官がやくざの事務所の一部を自宅として使っているようなもの。神本議員の政務官就任は、労働組合の専従活動家が、その立場のまま企業のトップに就いたのと変わりありません」

 また、兵庫県教組の幹部だった水岡俊一参院議員(56)も、この10月まで首相補佐官を務めたほか、日教組の支援を受けている議員を挙げるなら枚挙にいとまがない。平野博文前文科相〈63)は旧社会党出身で、日教組と深い関係にあるし、横路孝弘衆院議長(71)や鉢呂吉雄前経産相〈64)は、北海道教組が重要な支持基盤だ。

 そして、北海道教組といえば、09年に民主党の小林千代美代議士〈当時)に対する違法献金で、幹部が逮捕されて有罪が確定し、小林氏が議員辞職に追い込まれたのが、記憶に新しい。

 さらには、今年3月に日教組の新委員長に選出された加藤良輔氏にも、グレーな過去がある。

 神奈川県教組の書記長だった04年、横浜市教組出身で、この10月に文科相政務官に就任した那谷屋正義参院議員の選挙で買収が判明し、神奈川県教組と川崎市教組の委員長がそれぞれ逮捕されたが、その際、加藤氏も家宅捜索を受けていた。委員長らの有罪は確定しており、いわば選挙違反が行われた組織の幹部が、出世して全国のトップに就任する―。そんな荒業を無批判のうちにやってのけられるのも、日教組が“与党化”したからだ。

 同様のことは、輿石氏が君臨する山教組でも起きている。04年の参院選で、興石氏のために集めた資金が政治資金規正法に違反したとして、山教組の関係者2人に罰金の略式命令、二十数名の教諭に処分が下されたが、罰金刑になった1人はその後、教頭に出世したのである。さすがに山梨県議会でも追及されたが、議会関係者に尋ねると、「選挙違反者を強引に昇任させたのではなく、山梨の教員は選挙違反をしなければ出世できないんですよ」

 との答え。どうやら、やくざよろしく前科が勲章になるようである。

◆相手の懐に飛び込む戦術

 ところで、民主党政権になって領土問題が激化したのも、日教組の“与党化”と関連づけられるという。
「民主党の発足時、実務を支えたのは旧社会党系の事務方でした。被らは左派の能吏で、下手な国会議員より政策立案能力が高いため、民主党のマニフェストに旧社会党および日教組の政策が色濃く残ったのです」 

 と、先の小林氏。自民党に失望した有権者の多くは、そうとは知らずに民主党に投票したわけだが、「歴史観や外交、安全保障の考え方にさほど違いがない欧米の二大政党と違つて、日教組が重要な支持母体である民主党は、歴史観も外交や安全保障のスタンスも、自民党とは余りにも異なっていたのです」〈同〉

 なにしろ日教組の歴史観は、日本の戦争責任の追及がその柱になっているのだ。たとえば、北教組が08年に機関紙で「竹島問題は韓国側の主張が正しい」と訴え、朝鮮日報のインタビューに答えて同じ主旨の発言をしたことは、その象徴だといえよう。

 そして民主党政権になった後、日教組はかつてのように国歌や国旗に激しく反対するのではなく、巧妙にこれらを排除するようになったという。05年に山梨県から衆院選に出馬し、当選した赤池誠章前代議士(自民党)が言う。

「先日、地元の有権者と話していたら、君が代を歌ったことがない生徒がいるというんです。安倍内閣時の教育改革で、君が代を授業で教えることが決まりましたが、授業を行うのは教師なので、いかようにもサボタージュできてしまう」

 入学式や卒業式では形ばかりに日の丸を掲揚し、君が代も放送するものの、教師も生徒も歌わずに聴くだけ、という“折衷策”を導入している地域もあるという。日教組の理想が教育現場で、“現実路線”というオブラートに包まれながら、それと気づかれずに浸透するようになった―と考えれば恐ろしいが、その原点を赤池氏が指摘する。

「それは、94年に誕生した「自社さ」の連立政権にあります。このとき、日教組は文科省と直接話し合えるパイプを作り、その後は、たとえば輿石氏が社会党から民主党に、すなわち野党に移っても、文科省のキャリア官僚が政策打ち合わせをするという“慣例”として定着したのです」

 その“成果”として結実した、と赤池氏が問題視するのが、男女混合名簿の普及である。学級名簿を男女の別なくあいうえお順にする学校は、90年代から急増した。ジェンダーへの配慮だそうだが、むろん、それは社会党の与党化によって可能になったという。

 民主党への政権交代によって普及の速度はさらに増し、現在、全国の小中学校の7割以上で採用されているという。そして、この普及を主要な活動方針と位置づける日教組は「さらなる徹底を」と提案している。

 その結果、生じた弊害について、前出の山梨県の教育関係者が証言する。
「ある中学で、修学旅行の名簿も男女混合になっていたので、保護者が“部屋割りはどうするんですか”と質問すると、教師は“名簿通りに行います”と回答した。男女が同室なのか、と大騒ぎになり、撤回させたという話でした」

 名簿等の“副次的”なものを使って、闘争と気づかれずに自らの主張を実現する。それが可能なのも、政権のお墨付きを得ていればこそである。広島県の教育関係者も言う。

「日教組から見て“問題”と思われる教育内容は無視するという傾向は、広島県でも認められます。特に今、彼らは人事の掌握に力を入れていますね。日教組の組合員が校長になって教育委員会の中枢を占めても、保護者からは見えにくい。かつて新左翼の中でも、大衆運動を行った中核派に対し、革マル派は相手の懐に飛び込む戦術をとりましたが、それを彷彿とさせます。それこそが日教組が政権交代で学んだ,現実路線”の根幹だと思います」

◆教師の能力格差はタブー

 こうした新しい日教組の“体質”が浮き彫りになったのが、最近多発するいじめ問題である。大津の事件でも、日教組系の議員は誰ひとり行動を起こさなかった。義家氏が言う。

「彼らもかつては教師だったのだから、何らかの発信があっていいし、文科相政務官だった神本議員や、首相補佐官だった水岡議員なら、大津に“お仲間”もいるでしょう。すぐに現地入りして教師や保護者、生徒らの話を聞くべきでした」

 このように、日教組関係者が教育現場で無為無策になる理由を説くのは、先の小林氏で、「平等主義の日教組の下では、組合員の間で異なる人事評価が下されると団結が崩れる。頑張った教師が報われると困るので、いじめも見て見ぬふりをするのがいい、という恐ろしい結論に達してしまうのです」

 日教組は全国学力調査の廃止も訴えている。07年度から43年ぶりに復活した全員参加方式の全国テストは、民主党政権になって、一部の学校を抽出する方式に変更されたが、現実には保護者や生徒ばかりか少なからぬ教師からも、学校ごとの学力を正しく把握すべきだという意見が出ている。日教組がそうした声を無視するのは、学校間格差、すなわち教師の能力格差が明るみに出るのは絶対に避けたいからだという。

「日教組が強ければ、小汚いジャージで授業ができるし、生徒指導はほどほどに夕方に帰ることもできます。

 やる気がない教師には、9時から5時まで働いて年収l000万円が理想の職場。その実現のために組合活動に邁進するんです」

 山梨県の教育関係者はそう語るが、ただし、「熱心な先生は授業の準備のほかにも、休日をつぶしてテレビや新聞、雑誌、インターネットもチェックして、生徒とコミュニケーションを図るための話題を探しています。その結果、激務になって、日教組を通して教員増を切実に訴えている教師もいるんです。また女性教諭は母親である人も多く、育児と家事を考えると、学校では激務を避けたいと願ってしまう」(同〉

 このように、同情の余地がある教師もいるというが、そうした教師が、単にサボりたいだけの教師と共闘できてしまうのが、日教組の活動だというのである。

 しかし、ここにきて有権者にも変化の兆しが見えるという。前回の総選挙で興石氏の対立候補として出馬し、約4000票差で惜敗した宮川典子さん(33)は、地元の私立中学、高校の教員出身で、次期総選挙にも出馬する予定だが、

 「いじめ問題はもちろんですが、領土問題もきっかけになって、教育への関心が高まっているようです。保護者ばかりかお孫さんのいる高齢者からも“教育を再生しろ”と激励されることが多くなりましたね」

 日教組は今、自民党の復権に神経を尖らせており、「“自民党政権を復活させてはならない”という大号令がかかっています。しかし、民意によって与党の一翼を担えた彼らが、民主党への失望という有権者の民意を認めないなんて、噴飯ものです」(小林氏)

 日教組には正確な組合員数や決算を外部に開示する義務がないが、“与党”でなくなればぬるま湯からの脱却を求められるだろうし、“現実路線”の下、気づかれずに自己実現することも叶わなくなる。それを恐れているというのである。山教組の問題を追及する山梨県の望月清賢県議が言う。

「日教組では、組合員にさえ金の流れが見えない、非常に不明瞭な会計処理が行われています。しかし、順法精神を失って、どうして子供たちの前に立てるのか、と思います」

 19世紀アメリカの思想家、R・W・エマーソンは著作に「教育の秘訣は生徒を尊敬することにある」と記している。現政権下で振るった日教組の猛威に楔を打つことこそが、教育現場に「生徒への尊敬」を取り戻す道ではなかろうか。 (週刊新潮より)