第31回全教協教育研究大会パネルディスカッション


どうしたら祖国日本の国難を乗り越えられるか

平成23年8月15日  於 自由民主会館

●コーディネーター ・小林正氏(元参議院議員・教育評論家)

●パネリスト ・久保井規文氏(全日本教職員連盟委員長) ・萩生田光一氏(前衆議院議員) ・山谷えり子氏(参議院議員)

 

◆民主党政権が引き起こす五つの日本の危機


 【小林】 ご紹介いただきました小林です。本日は大東亜戦争終結の日です。私は当時、疎開先の秋田県のお寺で玉音放送を拝聴いたしました。

 本日のシンポジウムのテーマは「どうしたら祖国日本の国難を乗り越えられるか」ですが、六十六年前の八月十五日、この日から国難が始まったのではないかと思います。

 終戦の詔書は、「世界の大勢また我に利あらず、加うるに敵は新たに残虐なる爆弾を使用して頻りに無辜を殺傷し、惨害の及ぶ所、真に測るべからざるに至る。而も尚交戦を継続せんか、終に我が民族の滅亡を招来するのみならず、ひいて人類の文明をも破却すべし」と述べられました。さらに、「今後帝国の受くべき苦雛は元より常にあらず、爾臣民の衷情も朕善く之を知る。然れども朕は時運の趨く所、堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、以って万世の為に太平を開かんと欲す」と仰せられております。

 さる三月十一日、私たちは再び国難というべき東日本大震災に遭遇しました。加えて、同時に発生した原子力発電所事故は、地域共同体を一瞬にして破壊し、これはなお現在も進行中の事態です。

 三月十六日、天皇陛下のお言葉が昭和天皇以来という玉音放送がなされ、国民に多くの勇気と感動を与えました。この中で陛下は、自衛隊、警察、消防、海上保安庁などで働いている人々の労苦をねぎらい、被災者のこれからの苦難を、国民がさまざまな形で分かち合うことが大切と述べられました。

 「総力を将来の建設に傾け、道義を篤くし、志操を鞏くし、誓って国体の精華を発揚し、世界の進運に後れざらんことを期すべし」と、終戦の詔書の最後は結ばれています。
 今、日本は民主党政権の出現によって、国家喪失の危機に直面しています。これがもう一つの国難です。一つは、4Kといわれるバラまきでの財政危機。二つは、中国の偽装工作船による尖閣諸島沖での衝突事件。九月十四日、国辱というべき措置によって船長を釈放した事件。三つ目は、現内閣に対する諸外国からの信用が根底から崩れている事実。四つ目は、政治とカネの問題です。特に外国勢力との関係の中で、暗い闇を抱えている実態が明らかになってきました。五つ目は、政権が危機的状況にありますが、彼らの野望である人権侵害救済法案、外国人参政権、選択的夫婦別姓制度等々については、着々と準備しており、この政権の一刻も早い退陣を求めなければなりません。

 このような政治情勢の中で、三氏による討論を行います。それでは、全日教連委員長の久保井規文先生、お願いいたします。

久保井】  私の出身は栃木県宇都宮市です,今回の大震災は東北三県に比べると大きくないですが、二つに分かれて授業を行っている学校や風評被害にあっている農業、牧畜業があり、県民の不安が高まっております。

 八月十一日の文科省発表によると、今回の東日本大震災で亡くなった教師・児童は六百二十人、行方不明者が百十名、被害を受けた公立学校は六千校、私立学校が加わると七千校近くに上がっています。学校が避難所になっているのは八月十一日現在で八十二校、二万人以上の子供が避難生活をしており、親を亡くした子供は二百名近くにも上がっています。

◆校内暴力事件、十年で十一倍

 現代の日本の教育問題を統計から見ますと、まず不登校児童は小学生が約二万一千人。中学生は九万三千人を数えます。平成三年と比較すると1.7倍となっています。

  校内暴力は平成九年度に約千三百件、現在はなんと五倍に近い約六千五百件になっています。中学校に限りますと、平成元年に三千件であったのが、平成二十二年では、約三万七千件で十一.八倍になり、非常に増えています。

 日本に居住する日本語を知らない外国人の児童・生徒は、平成五年度に一万人でしたが、平成二十年度には二・六倍の二万六千人となり、この子達の学校生活にいかに関わるかが大きな問題となっています。

 また、普通の学級から特別支援に通っている小学生が、平成五年は約一万二千人でしたが、平成十一年になると四.二倍の五万人と増加しています。

 特別支援学級に在籍している児童・生徒は、小学校ではわずか十年で八倍、中学校で一.六倍。子供の数は確実に減っているのに、特別支援を必要とする子は増えているのが実態です。

 これらの原因はさだかではありませんが、ある調査によりますと、八割の親が家庭の教育力の低下を指摘しています。子供の教育に熱心な親とそうでない親の二極化が進み、子供の教育よりも、まずは生活が優先といった親が増えているのです。 

 箸が使えない子供、和式トイレが使用できない子供も沢山おります。そういう親にかぎって「学校でしつけて下さい」という要望が教師になされ、生活面の指導まで学校に期待する親がいるのも事実です。

 また、各家庭の経済格差も子供の教育に影響しています。生活保護家庭が増えていますし、給食費免除、遠足費が免除される準要保護家庭が、平成七年から平成二十年の間に二倍になっています。

◆忙しすぎる教育現場-残業は1ヶ月三十四時間

 次に教職員に関わる問題です。平成十八年に教員勤務に関わる調査が行われました。その結果、教員の残業時間は一ケ月に約三十四時間、休日にも八時間仕事をしている事実が判明しました。
 皆さんは、教師は児童・生徒に国語、算数、理科、社会、美術、体育といった教科を教えいるだけと思われるでしょうが、それに加えて、情報教育、福祉教育、人権教育、図書館教育といった様々な分野の教育が、位置付けられ、実践しているのが現状です。加えて、市町村教育委員会はもとより、国・県からの調査に対応しなくてはならないので、これらの仕事は、すべて児童・生徒が下校してからの業務となり、日々の残業が増える状態になってしまいます。

◆教職員の病気休職者は八千五百人

注目しているのは教員の健康問題です。朝日新聞の調査によりますと、今、病気休職の教員数は八千五百人、そのうち精神疾患、つまり心の病気で休職している教員は五千四百人、在職中に死亡された教員は約六百人です。
 教員に採用された一年間は、条件付採用となる研修期間です。その一年間に不採用になった数は平成二十一年度では三百十七名で、そのうち八十六名が病気による不採用でした。採用試験時には健康診断は行いますが、うち九名の者が死亡といったデータからみると、学校現場における精神的負担や忙し過ぎる教師の過酷な勤務の実態がうかがわれます。

 マスコミでよく教員の不祥事が報道されます。一部の教師の不祥事により、すべての教師に対する信用が失われてしまう結果になってしまう。教員は日頃から襟を正すことが大切で、公教育への信頼を失う行動はしてはならないと存じます。

 以上、学校現場における児童・生徒の問題、家庭の問題、教職員の問題について述べました。

小林】小林 今、学校現場で起こっている問題を共体的、詳細にわたりご報告いただきました。
 それでは、文教関係で活躍なされ、文科省で大臣政務官をなされた萩生田光一先生、よろしくお願いします。

◆行政力の差を再認識した東日本大震災

萩生田】 私事ですが、三年前のあの選挙で、文部科学大臣政務官の現職でありながら落選しまして現在、浪人中です。しかしながら、この国の教育にかける情熱は現職の皆さんに負けない頑張りをしてきたつもりですし、これからも取り組みますのでどうぞよろしくお順いします。(拍手)
 さて、東日本大震災の被災地の現状を見て学ばせていただきました。その一つとして、今回の震災を機に、地域の絆、地域の人と人との関わりの大切さと同時に、地方行政の行政力の差によって、その住民の幸福度が大きく変わるということでした。

 海外のメディアですと、ご遺体をそのままニュース映像として流しています。私はそういう映像を国民に知らしめる必要があるとは思いません。しかし、こんなに多くの国民が命を失った悲惨な震災を後世に伝えていくために、行政に携わる者、政治に携わる者は、事実を知ることが大切でしょう。(自動車運転)免許状の更新の際によく交通事故の悲惨な映像を見せられますが、事故の悲惨さとともに自分の不注意が加害者、被害者共に家庭の崩壊につながることを、本当に身に染みて感じます。

 大震災により命を失い、家を失い、家族を失い、ふるさとを失ったこの事態を、教育の場できちんと伝えていく必要がありますね。

 以前、平成の大合併により、三千三百の自治体が千八百四十になりました。私は、地域には歴史、伝統、文化があるから、人口だけ揃えればいいという考えにはやや反対の思いがございました。しかし、自治体はある程度しっかりした能力を持っていないと今回のような災害に対応できないのではないかと思います。小さな町や村には東京の二十三区にあるようなホスト・コンピユーターはありませんから、津波の高さや速度を計算すること自体無理な話で、小さい自治体の行政能力というのを考え直していかなければならないと存じます。

 なぜこのような話しをしたかといいますと、教育も全く同じだからです。
 今、夏真っ盛りですが、東京では午後の時間帶のプールはほとんど開いていません、東京の教員は午後のプール監督はしません。一日で一番暑い午後はやらないで、午前中で済ませてしまうのが実態です。東京ではプール指導はやっても十日もやらないでしょう。

 教員という職業は、その人との出会いにより人生を変える程大事な職業ですから、財政的にも、地位的にも、しっかりと裏付けるのが国の仕事だと考えます。しかしプール指導はしない、夏休み中の四十日間の中で、授業についてこられなかった子供の補習授業もやらない。一学期の遅れを、公教育で取り戻そうとする教師がもっといてもいいのではないかと思いますが、残念です。

◆教員の資格は国家資格にすべき

 義務教育の問題点について述べてみます。義務教育の場合、学校の設置者は市町村、そこで働く教職員は都道府県の職員、学校の責任者は校長ですが、義務教育の最終責任者は誰かと言えば、本当に答えがありません。市町村の学校現場で問題が起こっても、文部科学省が出向くことができないのが現実です。ゆがんだ教育行政を何とかすべきです。

 親の転勤で引越した場合、どこへ行っても子供は等しく学ぶことができるのが義務教育なのに、残念ながら県によって格差があります。

 この格差をなくすには、何といっても教員がより高い指導と教育に対する思いを持って子供に対処していただくことが大事で、そのために教員の資格は国家資格にし、国が最終的に責任を持つという制度を取り入れるべきだと信じています。

 地方に配属された教員と、行政力の高い地方自治体の能力が高ければ高いほど、より良い地方教育行政が行えることを、今回の震災を機に感じた次第です。

【小林】 ありがとうございました。それでは山谷えり子先生、よろしくお願いします。

◆感動した陛下のメッセージ

山谷】 東日本大震災の現状について、私も岩手、宮城を回ってまいりました。
 自民党は発生後三日目から、復興基本法の作り方、予算のたて方、がれきの処理に対する国の対応の仕方など、党としての対処をしました。しかし、民主党政権の対処の仕方は遅く、もどかしくてなりません。

 今上陛下がビデオのメッセージで、「東北の人々の雄々しさに深く胸を打たれております」とおっしゃられていましたが、私も東北の方々の雄々しさに感動した日々でした。

女性の方々は、朝の四時・五時から起きて炊き出しをなされ、男の方たちは、ご遺体の収容作業をし、夜八時・九時に疲れて帰ってくると、女性たちは心尽しの料理を用意しておりました。

 子供たちも立派でした。沢山の友だちを失い、学校が流されたけれど「合同授業で授業が始まり、新しい友だちもできました」「大人に心配をかけないよう、病気にならないように気を付けます」と元気に話をしてくれました。私は「日本の女たち、男たち、子供たちは何と雄々しいのだろう」と思いました。

◆品性高い日本人を作ったのは先祖様

 外国のメディアが「日本国民は冷静で理性的で品性の高い国民である」と報道されましたが、日本を作ってきたご先祖たち、長い間素晴らしい教育をしてきた日本の成果が現れたのでしょう。戦後の日本の教育は衰退したと言われていますが、ここでふんばって立て直さなければと思っています。


 私は今朝、靖国神社にお参りいたしました。来年の四月二十八日で主権を回復してから六十周年になります。GHQは六年八ヵ月、日本を占領しておりましたが、日本が独立後も日教組がGHQの政策を引き継いだかのように、日本の教育界を支配しました。GHQは日本の歴史、地理、修身、道徳教育を禁止しましたが、日教組は加えて、自虐史観に基づき、歴史観を歪曲し、領土問題も正しい事実を否定、日本を築いてきた素晴らしさ先人、親、ふるさとの人々の物語を教えてきませんでした。

日教組の間違いを正した新教育基本法

SANY23441 日教組は個人の自由、競争より結果の平等を重視し、切磋琢磨する風潮を奪い取りました。誰でも一生をかけて、自ら課題を発見し、自ら解決していくのですが、日教組は、小学佼低学年から自ら課題を発見し、自ら解決する能力を培うとは言うけれど、幼い子は経験の蓄積はありませんから、自ら課題を発見するのは無理であり、子供たちは迷子の状態になっていました。

 そこで安倍内閣では、根本法である教育基本法の改正に取り組み、それに合わせて学習指導要領を改正し、道徳心、伝統文化を大切にするよう定めました。

 その学習指導要領に基づいて作成された教科書の採択が今、全国で行われています,今年の四月から小学生が、来年の四月から中学生が新しい教科書を使います。

 小学校・中学校とも国語の教科書は神話とか、日本の美しい話が載り、大変充実しました。しかし、社会・公民の教科書はまだイデオロギー闘争の餌食になっています。民主党政権に迎合するかのように、CO2,二五%削減を演説している鳩山元首相が載っている教科書などが出版されています。

「ゆるみ教育」になってしまった「ゆとり教育」

 ゆとり教育が叫ばれましたが、実際に行われたのは、ゆるみ教育でありました。年齢にふさわしい教えるべきことを教えないし、本当に子供が理解しているかを確かめずに漫然と授業をしている。このような実態を改革するため、全国学力調査を実施したり、学習内容を増やしました。

 教科書も二五%ボリュームアッブ。今後の中学教科書では算数は三三%アップ。理科も四五%アッブされました。ところが、公民と社会科の教科書は良くなっていません。なぜ、良くならないか。やはり、日教組の影響でしょう。

 「あんたはひどい家に生まれたわね」と言い続けられたら自分の親を愛する気持ちは無くなります。会社に入社した時、先輩から「とんでもない会社に入ったぞ」なんてあちこちから言われたら、もう仕事をやる気がなくなってしまいます。
 良いことを教えないで、ゆがんだことを教えていくというのは、子供たちの心を傷つけてしまうことになってしまいます。

 BBC放送とか「ニューズウィーク」で、世界で最も貢献している国べストスリーに入るのが日本です。本来の日本の姿、雄々しい国民性を取り戻すための教育再生をしていきたいと思います。
小林  山谷先生ありがとうございました。お三方が共通して触れておられたのは、東日本大震災についてでした。いつの間にか緩んでしまった日本社会、日本人同士の連帯、絆について震災が日本人に与えた天啓かも知れません。
 天皇陛下のお言葉にありました自衛隊、消防、警察、海上保安庁など国の仕事としての任務を果たしているわけですが、民主党は国の仕事を軽視し、地方主権など、とんでもない思想を振りまいてきたが、この考えに対して鉄槌が下されたのかも知れません。

 それでは、会場からのご意見、ご質問を下さい。
 
◆教科書採択を決定するのはどこか

会員=千葉県】 私の市では、教科書無償制度ということで、採択協譲会を設け、教育長に教科書採択の専決処分権を与えてあります。

 これは教科書の採択は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の二十三条六項で、教育委貝の権限と明記してありますが、これは権利の放棄です。採択協議会で採択を決定するのは、法律が矛盾していると考えますが、どうお考えですか。

山谷】  今まで慣習的に採択協議会が現場の先生たちに聞いて、教科書の内容をまとめ教育委員に一覧表を渡します。渡された教育委員は、現場の先生の意見どおりにする傾向があるのは問題です。
 私も東京都世田谷区の教育委員をやっていた頃、社会科の教科書の出版社は七社でしたので約八十册もあり、全部読むのは大変でした。読むポイントとして「自衛隊をどう書いているか」「日本の国柄をどう書いてあるか」など視点を決めて読みましたが、地方の教育委員さんはやっばり教育現場の先生の言う通りにしてしまい、採択協議会の言うことを聞いてしまう結果になっています。

 全国の採択にあたり、歴史、公民教科書に自由社、育鵬社が参入しましたが、採択直前になって両社が不採用になったケースがありました。民主党や日教組などの圧力によってひっくり返ってしまった状況はたしかにありました。

小林】 ありがとうございました。

会員=東京】 いま民主党政策の一つとして、人事院を廃止し公務員に対する労働基本権を付与する動きがありますが、教員と労働基本権とは相容れないと考えますが、いかがお考えでしょう。

教員に労働基本権を与えるのはおかしい

萩生田】 労働基本権〈団結椎、団体交渉権、争議権〉を教員に与える議論の前に、教育公務員とは何たるかをしっかり議論した上で、必要とあらば法律の議論に入るべきです。元来、教員の仕事はタイムカードで計れる職業ではなく、教師との出会いがその子の一生を決めることもある大事な公務員です。だから、他の公務に比べ生涯年収は多い制度になっています。もし教師に労働基本権が与えられたとしたら、現行の人材確保法は見直ししなければなりません。

 ところで、先ほど山谷先生が日教組の話をしましたが、東京都の教員の中には、子供たちと食べる給食の時間は休憩をとっていないから、勤務時間を四十五分さかのぼり、四時半に帰宅する教員もいます。また、野球とかバスケット部などの部活動に頑張っている教師、放課後子供とともに過ごす教師もいますが、全然やる気のない教員がいることも事実です。

 教育基本法改正時に、教員の能力とやる気を常にチエックしておくということが大事なので、教員を対象に十年に一回の免許更新制を作りました。私は十年でなく、二年、三年で一回更新制を取り入れないと、十年間ダメ教師に出会った子供はどうなるのかという観点から、十年に一回に反対したいきさつがあります。教員の研修制度の改善と同様に大切なのは、教員になるための制度も大切です。

 教員になりたくて四年間勉強した人と、大学三年生になって「教師の資格を取っておこうかな」と思って教員になった人が同じ現場で働くというのは、あまりに意識の違いがあり過ぎます。

 私は教員の養成期間は、六年が望ましく大学院に残り、大学院の三年間は現場で働き、その間教員への向き、不向きを決定するような仕組みを社会全体で見直す制度にしていくべきです。「教師という仕事は何か」を再考する必要が考えられます。

小林】 それでは、教育専門職として組織活動をしている久保井全日教連委員長から一言お頼いします。

日教組ばかりが教員の団体ではありません。

久保井】 全日教連結成の原点をまず述べます。昭和二十二(1947)に日教組が結成され、勤評闘争、学テ闘争など非常に過激なイデオロギー闘争を展開しました。

 「教育を預かる教師としておかしい行動だ」とイデオロギー運動を批判した教員がつどい、結成したのが現全日教連の母体でした。

 「教師は労働者ではなく専門職」と主張するわれわれは当然、今回の労働基本権付与、人事院制度廃止には反対です。教員に協約締結権が付与されれば、当然、次に来るのは争議権です。教師にスト権が与えられたら、学校現場が混乱するだけです。また、人事院制度は日本の公務員制度に合った公平な制度であり、ILO〈国際労働機関)にもきちんと説明すればよいと思います。とにかく、教師に労働基本権を持ち込む考え方には断固反村です。

小林】 ありがとうございました。前厚労大臣の細川氏が昨年五月、IL0の総会で、日本の公務員に労働協約締結権を付与して団体交渉権を行うという労働基本権付与の方針を国際公約してきて、今その動きが見えてきました

 日教組は七月の大会の方針の中に「職員団体から労働組合になり、われわれの賃金をわれわれの力で勝ち取る」という方針を掲げました。従って要求貫徹まで断固闘うとなると学校現場は混乱することは必至でしょう、民主党政権がある限り、いつの日か、実現する危険性が高いということを申し上げます。

◆学校教育の仕組みの問題点は何か

会員=千葉県 学校教育の仕組みの問題点についてお尋ねします。義務教育の教員の監督権は市町村教育委員会に、任命権は県教育委員会にありますが、市町村と県の権限と責任がよくわかりません。この点についてご指導いただきたいと思います。

教育長は教育委員長の指示に従う立場

小林】 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により、教育委員長が教育委員会の最高の力を発揮できるとりまとめ役であり、教育長は事務方の代表で、教育委員長の指示に従う立場にあります。ですから、教育長が専決の権限を持つことは法律違反です。各市町村教育委員会の合議制に基づき、教科書の採択を行うのが法律の趣旨です。

 今、沖縄県の教育委員会が八重山市の教科書採択地区が育鵬社の教科書を採択したことに対し、「教育委員を変えよう」などの圧力をかける事件が起こりました。

 背景には何があるか。教育委員会は県も市町村も圧力団体に弱い体質を持っています。圧力団体とは、自治労、日教組、部落解放同盟、在日外国人勢力があげられます。これらの圧力団体が八重山市の教育委員会が育鵬社の社会科、公民科の教科書を採択したことに反対し、県教育委員会に圧力をかけ、採択を中止させようとしたのです。

また、神奈川県の小田原市において、三社の教科書を採択しないよう、民団の湘西支部が市議会に要望、市議会が賛成多数によって採択が中止された事件が起こりました。市議会が教育委員会固有の権限に圧力を加えることで、あってはならないことです。

 小田原は二宮尊徳翁ゆかりの地です。圧力団体が採択を反対した自由社、育鵬社二社の教科書には二宮尊徳翁について多くのページをさいていますが、圧力団体が支持する教科書には全然載せていません。このように矛盾した運動が圧力団体の策動で全国的に起こっているのです。

【金井=全教協顧問】  日本教育文化研究所所長を以前しておりました金井肇です。愛工大名電の教育は人間らしい心、温かい心を育てています。

 全日本教職員連盟は活動理念として「美しい日本人の心を育てる教育の創造」をモットーとしていますが、久保井先生にお聞きいたします。

久保井】 「美しい日本人の心を育てる」は全日教連結成以来、基木理念として謳っています。白己を愛する心、人を愛する心、自然を愛する心、社会を愛する心、国を愛する心の五つの心を掲げております。二週間前に、山口県下関市で全国教育研究大会を開催しました。

 その中に歴史、伝統、文化を尊重する教育を進める分科会や、道徳教育、心の教育を進める分科会を設置し、子供たちへの指導を深めています。

 新しい教育基本法に伝統、文化の尊重が書かれました。この理念はまさに、私たちが求める理念であり、美しい日本人の心を育てることにつながるのではないかと考えています。

【山谷】 自民党の歴代総理はそれぞれ教育に関心を持たれ取り組まれました。田中角栄首相は、教員の待遇を引き上げるために人材確保法、中曽根康弘市相は臨時教育審議会を作り、改革に取り組み、安倍晋三首相は教育基本法を改正し、美しい日本人の心を伝えようとしました。小学五年生に一週間の農業体験を、中学二年生に地元の職場体験を一週間体験させるための予算を取りました。また、伝統文化体験やふるさとの偉人を教材にする予算を麻生太郎首相は盛り込みました。

 残念なことに政権交代になって、蓮舫さんによって事業仕分けされ削られましたが。しかし、来年から男女とも武道が必修化します。礼に始まり礼に終わる道を求める教育を実践しようとしています。
 自民党はいま町村信孝座長の下で、国としての人づくりの計画をまとめました。それによりますと、できるだけゼロ歳児は保育園に預けないで家庭で教育をし、愛着の形成をして欲しい。脳科学の最近の研究によると十歳までは歴史観、社会観、科学に関わる読書を勧めると自動的に勉強したくなるような教育に予算をつけていく方策を立てています。

 では民主党政権が今やろうとしているのは、公務員に労働基本権を与えようとしています。日教組は成立を見込んでいますし、共産党系の全教も、新入会員の獲得に取り組んでいます。地方公務員でもある教員も含め、人事院勧告によって待遇を決めるのではなく、私の大嫌いな権利闘争によって待遇を決めることになる、この動きについて危惧しています。

教育委員は名誉職、教科書を読んでいない教育委員

【出席者=神奈川県】 私は教科書の採択にあたって、教育委員会など何の役にも立っていないと思います。教育委員はみんな名誉職なんです。元校長とか元教頭などが日教組の反対を受けないように、退職後うまく泳いで教育委員になります。一般の人々と同様、教育委員も歴史、公民の教科書会社で作る教科書など読んでいません。

 AとBを採択するのなら、例えば聖徳太子について双方の教科書にどう書いてあるかを比較しなければ、良いか悪いか分かりません。

 教科書をじっくり読んでない、教科書を選ぶ能力のない人々が一回一万円貰って、教育委員会に出席し、教育長の言う通り、「はいさようでございます。結構です」と決めてしまうのが、教科書採択の実態です。

◆おかしな教科書がなんで文部科学省の検定を通るのか

参加者=千葉県】 子供たちに正しい教科書で学んで貰いたいという願いのもとで、平成十三年、十七年、そして今年、教科書問題に一国民、一県民として議会への請願、教育委員会への要望を行ってきました。しかしこの間、教育委員会が言うのは「そんなことを言っても、教科書は全部文部科学省の検定を通っているでしょう」と言って逃げてしまいます。

 お三方にお願いがあります。私たちがいくら運動をしても限界があります。やはり政治の力や専門職の団体の方々の力で、文科省の検定自体の在り方に切り込んでいただきたいと痛感しています。
小林】ありがとうございました。それではパネリストの方々にひと言ずつお話を賜わり締めたいと存じます。

久保井】  教育専門職を任ずる全日教連として、しっかり取り組んでいきます。今回の討議でも取り上げられましたが、公務員に締結権を与える問題は看過できない問題です。
 皆さんは教職員団体というと日教組だけだと思っておられるかも知れませんが、ぜひこの機会に全日教連というまっとうな教職員団体があることを、知り合いの教職員の方に話していただければと存じます。

小林】 それでは萩生田先生。

萩生田】 先ほど福島の方から質問がありましたが、私は人事権を地方教育委員会に一時的に預けることだと思います。教員の採用は広域でしたほうが、良い先生が集まるとは思いますが、その先生方が都道府県から市町村に出向して三年なり五年なり行って失敗しても、人事権は県教委にあるから安心してしまいます。ですから、緊張感を持って現場で頑張ってもらうには、市町村に人事権を与えた方が良いと考えます。

 教育委員会制度についての話ですが、市長が選挙の時の論功行賞で教育委員を任命しているのでは教育委員会は本当の機能を果たしません。
 最後に教科書採択の問題です。何と言っても一番いけないのは文部科学省です。くだらない教科書がなんで検定に合格するのかということなのです。

 最後に言い訳になりますが、戦後六十年経って学習指導要領解説書の中に「竹島」の2文字を頑張って抵抗の中で入れました。そして指導要領必携とし日本全国の教師全員に配付しました。
 最後に皆様に期待したいことは、皆様の地元の選挙の時に、教育や人づくりについて「あなたはどんな考えを持っているのか」と候補者に聞いて下さい。皆様の視点の厳しさが日本の教育行政に繋がると思います。

小林】 ありがとうございました。それでは山谷先生、お願いします。

外国人党員の投票権は憲法違反

山谷】山谷 萩生田先生と良い教科書ができるように、教科書の文章にどう反映されるかという項目までかなり細かく作りました。拉致問題、人権侵害、自衛隊など今まで教科書に載らなかつたことも載るようになりました。しかし教科書によっては、自衛隊について「憲法違反という人もいる」と、はすに構えた書きぶりの教科書もあります。子供たちにどんな風に伝わるか心配しています。

 先ほど小田原の教育委貝会の話がありました。小田原の教育委員会に在日の大韓民国・民団が日本の教育に口を出し、それを議会が聞いてしまうという奇妙なことがありました。

 民主党政権は民団に選挙を手伝って貰っておりまして、民主党の当時選挙対策委員長だった赤松さんが、民団の新年パーティーで「皆さんのお蔭で政権交代を果たすことができました。従いまして外国人地方参政権を通すよう頑張ります」とお礼を述べています。

 それから、拉致の実行犯に深い関係のある団体に六千二百五十万円、また国会議員、地方議員に二億円のお金が行っている政党です。党員、サポーターに投票権がある代表選がありますが、民主党は外国人の党員、サポーターを認めている政党で、これは大問題です。実質、日本の総理大臣になってしまうのですから、それをいまだに直そうとしません。このような変な政党は早く倒したいと思います。〈拍手)

小林】 ありがとうございました。

 民主党はこのたびビサ発給の要件を非常に緩和しました、日本にアジア地域の人々が入りやすくなり、長期滞在ができる便宜を図っております。外交というのは相互主義ですので、相手も便宜を図るのですが、一切求めておりません。また「子ども手当」の問題ですが、外国にいる日本の子供には出さないのに、日本にいる外国人の子供には支給してます。さらに外国人の留学生には三百二十五億円と受け入れ充実の予算に比べ、日本人学生の留学推進のための予算は二十五億円と大きな差があります。つまり、日本の国家解体に向けて国境を低くし、やがて東アジア共同体構想の中へ埋没していくというシナリオが既に書かれているわけですから、一刻も早い民主党政確の崩壊へ持って行かなければなりません。そういった政治情勢を作り出すために、ともに頑張りましょう。

 本日はどうもありがとうございました。