いじめ対策に65億円 文科省が概算要求
文部科学省は各地で深刻化するいじめ問題への対応を強化するため、8月29日に発表した平成27年度予算の概算要求にスクールカウンセラー(SC)など外部の専門人材を活用していじめ対策を推進するため65億円を盛り込みました。
現在、公立中学200校で実施しているスクールカウンセラーによる週5日の相談体制を400校に拡充。また、就学援助を受ける児童生徒が3割を超える自治体の公立小中学700校に、カウンセラーを重点的に配置します。
これらのいじめ対策とは別に、不登校の生徒らが通うフリースクールに関し、政府の教育再生実行会議が提言した公費負担の在り方の検討や調査研究に9800万円を要求。8都府県にとどまっている夜間中学の設置促進に向けて4400万円を計上しました。
学校現場や教育委員会からは、SCの有用性を認める一方で「それだけでは、いじめ解決に結びつかない」との指摘も出ています。SCへの相談で多いのは長期欠席や家族関係、自分自身についてなどが主流で、いじめに関しては全体の割合としては少ない。教師が多忙化し、児童生徒一人一人に十分な目を配る余裕が学校にないのが実情で、いじめ対策として国が予算を付けるなら教員を増やすことも検討してほしいとの声も根強い。
実際、自治体独自で教員を増やし、いじめの早期発見などに手厚く対応しようという動きも出ています。教員数もSCの配置時間も限られている中、教員はSCの視点や考え方を身に付けて実践するなど、最大限活用することが求められています。
他にも、小中高校での英語教育の強化など、世界で活躍できる人材の育成に向け235億円を要求。小学校の英語教材の作成や教員の指導力強化のほか、小学校英語の教科化に対応し、2220人の外部人材を活用できる費用に充てる予定です。
文部科学省が発表した2015年度予算概算要求では、一般会計は前年度当初比10・1%増の5兆9031億円。大学生や専門学校生向け奨学金の無利子枠を3万人増の47万1000人にするため871億円を要求しています。国立・私立大学の授業料減免枠も6000人分増やし、393億円を計上しました。
低所得世帯の小中高校生に対する支援も拡充。高校生が対象の奨学給付金は、第1子の給付額を年12万6000円~14万7200円に増額改定し、第2子以降との給付額の差を解消しようとしています。小中学生向けに辞書などの購入費や学習が遅れがちな中学生を教員OBらが指導する費用を新たに補助する予定です。
これで少しでも、教師の多忙化が軽減され、本分である授業に集中できる環境づくりを整えていってほしいものです。