フリースクールを本格支援へ 文科省
文部科学省は、不登校の小中高校生らが学習指導を受けたり体験活動をしたりする民間施設のフリースクールへの支援方法について法改正を含め、検討を開始しました。
フリースクールに対しては安倍晋三首相が昨年9月、新たに国が支援を行う方針を明らかにしていましたので、これが具体化した形です。
安倍首相は昨年9月10日、首相は東京都北区のフリースクール「東京シューレ王子」で、生徒らと楽器を演奏したり、スクールでの過ごし方について意見交換したりした視察後、「学習面、経済面でどういう支援ができるか検討するよう文部科学大臣に指示したい」と記者団に述べ、方針を打ち出していました。
フリースクールは30年ほど前から広まり、文科省によると、全国に約400のフリースクールがあり、少なくとも約2100人が通っています。
法律上の学校ではないため定型の形がなく、補助金を受けていないケースも多いのが実情です。運営主体はNPO法人や保護者など多岐にわたっています。規模は1日当たり数人~50人など、多種多様。条件を満たせば、在籍する学校で出席扱いになっています。
一部を除き法的な位置づけがないため、授業料の公費負担や保護者への経済支援が手薄なことから、国の教育再生実行会議が昨年6月、支援の検討を提言していました。
不登校の小中学生は約12万人と高止まり状態。文部科学省が昨年10月に発表した問題行動調査(2013年度)によると、不登校の小中学生は計11万9617人(内訳は小学生が2万4175人、中学生は9万5442人)。1千人当たりでみると、小学生は3・6人、中学生は26・9人が不登校でした。2007年度以降、合計数は減少していましたが、6年ぶりに増加に転じています。
下村博文文科相は当時、「依然として憂慮すべき状況。無理やり学校に戻させるのではなく、多様な選択の中で、より教育環境に適応できるように考えたい」と述べ、フリースクール関係者らを集めたフォーラムの開催や有識者会議の立ち上げなどの方針を示していました。
現在、フリースクールは国の制度として位置づけられておらず、制度化されれば、子どもを学校に通わせるよう親に義務づけた1941年以来の政策大転換となります。
有識者による初会合が1月30日に開かれ、検討会議の初会合では、下村博文文科相が「多様な価値観が求められる時代となり、子どもたちが自ら未来を切り開いていける教育の展開が必要な時だ」とあいさつ。これから本格支援への具体策検討に乗り出す見通しです。
保護者が子どもに教育を受けさせる就学義務については、現行制度では通い先は小中学校や特別支援学校などに限られ、フリースクールに通わせても就学義務を果たしたとみなされていないのが実情です。これを法的にも改正していく方向性に入りました。
一方、不登校の増加を受け、1992年には当時の文部省が、フリースクールで勉強した場合も在籍先の校長の判断で出席と扱えるよう通知していて若干変化の兆しが見えていました。
こうした矛盾した状態が継続してきたため、政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大総長)は昨年7月、教育制度の中におけるフリースクールの位置づけを検討するよう提言し、本格改正への下準備が進んでいました。
今回の検討会議ではフリースクールでの学習内容を制度上、どう位置づけ、経済支援、学習支援のあり方など2015年度末までに法改正を視野に結論を取りまとめる見通しです。