変わるか、6・3・3制=小中9年を「4・3・2」に


 日本の教育現場では、小中一貫教育を活用して「6・3・3」制に風穴を開ける動きが出てきている。

 東京都品川区立の小中一貫校「日野学園」。午前8時半、1~4年生の教室では、児童らが黙々と鉛筆を持つ手を動かしていた。週4日の朝30分を漢字や計算など基礎の徹底に充てる「根っこの時間」。

 「1~4年生は単純な反復練習を抵抗なく受け入れる。学力をつけるため1学年上で習う漢字も練習している」と、青木経校長(60)は話す。同区は2002年度に小中一貫教育を導入し、06年度からは全校の教育課程を「小1~4」「小5~中1」「中2・3」に分け、目標を設定した。国の特例校の指定を受け、学習指導要領に縛られない先取り学習も可能だ。 

 5、6年生からは教科担任制とし、専門の教員らが思考力を重視した授業をする。同校では、5、6年生の授業時間を5分延ばして50分とし、6年生の3学期には、中1の数学と英語の教科書を使って教えている。同区の教育改革の検証に携わった小川正人・放送大教授は「小5頃から心身の発達の個人差が開き、集団生活でも学習面でも対応が難しくなる。高学年は中学校のような教科担任制で、専門的に教えるのが効果的だ」と指摘する。中学校の生活や学習になじめない「中1ギャップ」解消にも有効だという。

 広島県呉市でも、教育課程を「4年・3年・2年」で区切る。2000年度から小中一貫教育に取り組み、07年に開校した小中一貫の市立呉中央学園は、5、6年の授業が一部教科担任制だ。国語や算数は中学校教員が教えることもある。9年生が4年生にスポーツを教えるなどの交流も活発だ。小学生には中学生への憧れ、中学生には自信を持たせるのが目的で、「白分たちが模範にならなければと思っています」と9年生の定兼晃君(15)。

 同市では、中1の暴力行為が07年度の40件から11年度は11件、いじめの報告も31件から5件に減り、学力テストの成績も向上。呉市教委では、「中学校生活に適応し、落ち着いて過ごす生徒が増えた」と小中一貫教育の成果を分析する。

 小中の9年間を「4・3・2」などに分ける教育課程は、青森県三戸町、福岡県飯塚市などでも導入されている。文部科学省によると、校舎一体型の小中一貫校は全国に約150校あるが、財源や用地の確保といった課題がある。

 政府の教育再生実行会議は小中一貫校を制度化した上で、地域の実情に応じ学制を弾力的に運用できる仕組みを検討する見通しだ。教育制度に詳しい葉養正明・埼玉学園大教授は、「学制を弾力化し、小中一貫教育を進めるためには、学習指導要領や教員免許など、教育制度全体の見直しも必要だ」と指摘している。
 
小中一貫教育に取り組む主な自治体
  ■4・3・2制 
    広島県呉市ー2007年度から全市で実施。11年度に初の校舎一体型が開校。
    東京都品川ー06年度から全区で実施。校舎一体型は現在6校。
    青森県三戸町ー09年度から実施。小・中学校教員が行き来して一緒に授業を行う
    福岡県飯塚市ー11年度から実施。13年度、初の校舎一体型が開校
  ■5・2・2制
    熊本県産山村ー07年度から実施。同じ敷地内の唯一の小・中学校が連携。6年生は中学校の英語を学ぶ。
  ■4・5制
    広島市ー10年度から全市で実施。小1~小4は基礎の徹底、小5~中3は思考力の向上などを目指す。